この字が墓石の上に刻まれて、雨に叩かれ、風に曝され、厳しい墓地に佇むかと思うと、私は書いていてとても心が安らぐんです。私はもう生きている人より死んだ人に親しみを感じるんでしょうかね。
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪
明日をのみ思ひわづらふ
私は外へも出られないんです。何処へ行っても思い出しますからね。家の中で凝としてたって私は漸と耐えているんです。でも、家の中なら泣きたい時に泣けますもの。
人は言うでしょうよ。ささやかなつつましい幸福に満足しようって。ええ、あたしだって満足するでしょう。でも、どんな苦しい思いで満足しているか、誰が知ってるでしょう。