イカロス小林

桐島、部活やめるってよのイカロス小林のレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.8
2度目の鑑賞。
ホント無駄がなくて素晴らしいですね。とりあえずタイトルの「桐島」が作品中終始不在(でありながら中心)であることへの理解を持って観た方が良いでしょう。
なぜ桐島が出てこないのか、どうして周囲の人々は不在の1人に対しそこまで慌てふためくのか。
そこに目まぐるしく絡む男女の関係性や部活動における関係性、ひいては学校内のヒエラルキーが介在する。
それによりあぶり出されるのが、神木君演じる前田と東出君演じるヒロキであり、「結局できる奴は何でも出来て、できない奴は何にも出来ない」と語った(悟ってしまった)ヒロキと一途に映画に取り組む前田との対比、というのが大筋と言えますね。
ヒロキが最後に涙したシーンはとりわけ印象深い。前田にかっこいいね、と言われるも自分には何ら熱中することもなく、何のための学校だろう、部活だろう、若くしてそう悟ってしまうことの悲しさを見事に伝えた。かっこよくて万能で、なのに不幸せ。その姿を見事に演じた彼の存在感は見事としかいえません。。
大団円のシーンにおいて、(不在の桐島を頂点とした)ヒエラルキーの中でもがく人と映画部とをゾンビを通して描いたことはさらに映画に深みを持たせるとともに映画ファンをも熱狂させました。
などなど、なかなか語り尽くせぬ、けれども語り尽くしたい作品でした。吹奏楽部の子はああやって演奏に逃げていいんだ、と大人になった今の自分だから思うが、当事者としては、、、考えるだけでも甘酸っぱい。そんなシーンの連続でなおかつ無駄がない本作は本当に傑作だと思います。
イカロス小林

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