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拳銃を売る男のa9722のレビュー・感想・評価

拳銃を売る男(1953年製作の映画)
4.0
とてもよかった。シネマヴェーラにて。
犯罪者と子供の逃避行、今となってはこのテーマの映画をごろごろと見るけれど、今作は1953年、70年前の作品ということになる。
ジョセフロージー監督の初期、中期の間くらいの作品で傑作だった。

警察「なぜあの男が銃を売ろうとしていたのを通報しなかった?殺人を防げたかもしれなかったのに」
街の老人「なぜあの男にチーズだけでも恵まなかった?殺人を防げたかもしれなかったのに(笑う)」
というセリフのやりとり。分かりやすくもあり、かといってバカというわけではなく、ひねくれないそのストレートな皮肉や意見が刺さる。
フランス映画で基本このストレートさはないからね。

ただ空腹だっただけ。
ただひどく疲れていたから寝床が欲しかっただけ。
人間だから生きる権利があると思っただけ。
お前以外の連中はみんな俺の死を望んでる、
俺の死を望んでないのはお前だけだ。

殺人犯の男が子供にこんな風な話をするシーンがあった。
その唯一自分の死を望まない子供に、最後男は行けとさよならをする。
子供はグッバイ、ファーザーとその場を去る。父親がないその子供も、ただただ父性をを求めていたんだろう。
非常にストレートな涙の描き。やはり舞台もイタリアということもあり、イタリア映画の子供の描き方などの意識ももちろん十分にある。
がしかし、やはり逃げてきたジョセフロージーがイタリアで撮影したと言えど、曖昧な中でもやはりアメリカ映画だなと感じる点も多い。

往年のハリウッドスター、ポールムニのかなり味のある風貌、演技も大きい。
これくせになる。
今知ったが、ポールムニはウクライナ出身だそう。

サーカスで、子供が力自慢ゲームみたいなところの前で、パパは強いから!絶対できるよ!みたいに自慢し、引っ張られポールムニがそのゲームをするシーンがある。そして見事ゲームを成功させる。
そのひと時に擬似家族をみて、なんとも心が痛くなった。

ジョセフロージーっぽいのかと言われると、あまりそういうところは多くなく(後半部分はぽくなるけれど)、かなりマイナーな作品と言えるのかもしれない。
私はこのイタリアの要素が大いに入ったジョセフロージー作品、気にいった。
ラストシーンは港町の住宅の屋根の上での逃亡。この絵作り、撮影も素晴らしい!
そこにエモーショナルなシーンを合わせるのもなお素晴らしい!
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