あゆ

泥の河のあゆのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
5.0
戦後10年の大阪

ずいぶんと前に見たのに感想が書けなかった。やっと荒熱が取れてきた。

そう、戦後10年。この映画は何も昔の話をノスタルジーに書いたものでは無く、それこそ泥臭く静かに流れ、時に人間を丸っと呑み込んでしまう泥の河のような映画だった。

ポケットに空いた穴や、瓶のサイダーにどうしようも無いくらいの切なさと、友達の母親の目を見張る美しさ。両親から向けられる温かい目と、沢山の愛情。お祭りの帰りに手を繋ぐ後ろ姿。沢山の死を、それが当たり前だった日常が、時々ふっと帰ってくる瞬間。忘れたい戦争、忘れられない戦争。これからの事。日本の未来と自分たちの未来。

私たちの未来は誰も想像つかなかっただろうな。
私たちのこの日常はどうだろう。
喜んでくれるかな。悲しませてしまうかな。

@午前10時の映画祭
あゆ

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