空きっ腹に酒

脳内ニューヨークの空きっ腹に酒のレビュー・感想・評価

脳内ニューヨーク(2008年製作の映画)
-
何度目かの鑑賞。


この世界はあなたの世界で、あなたが主役です。そして、誰もがみんな、自身の世界の中心で、主演︰自分、の世界を生きてる。
みんな自分の世界の主役だけど、世界には色んな人がいて、それぞれに色んな役割を果たしてる。妻は君で、娘は君で、職場の仲間は君たちで。そんな風にして、自分の世界には他者が介入してまわってる。自分の役割を果たすべく行動する、相手の期待に応えるべく、「あるべき姿」を演じることもあれば、時に役割を捨てきって、他者の世界でも「自分」を生きることもあるだろう。ここに必要なはずのあなたがいなくなったなら、じゃあどうする?代わりを見つけよう。空いた穴を塞ぐように別の誰かを登場させて、人生を続けていく。こんな風になったらいいな、と思い描くビジョンはいつになっても完成を迎えることを知らないままで、描いては消して、また描き直してと、不格好なパッチワークのような人生を過ごす。ぼくはとても孤独なんだ、寂しいんだ、それはいつまでも、どこまでもぼくを追いかけてくるんだ。ちっぽけなぼくの人生、ちっぽけなぼくという存在、ちっぽけじゃないのはこの孤独だけ。いつかの誰かを期待して、いつかの何かに期待して、自分が、人生が、変わるかもしれないと抱く淡く頼りない希望。誰か、ぼくはここにいるんだ、誰か、ぼくを見つけて。

「アノマリサ」でも思ったけど、“one of them”の中から“the one”を探し求めてるのがすごく感じられる。他者と自分、そして孤独。根暗なわたしには響く作品で、やっぱり好きなんだよなあ。孤独なのは自分だけ、って思うから孤独なんだよな。みんながみんな、それぞれに少しずつ孤独なんだと思う、本当は。それを知った時、共有出来ないはずの孤独から、不思議と安心感を覚えたのを思い出す。わたしだけじゃないんだって思ったら、孤独が特別なものじゃなくなったから。
寂しさも孤独も、誰かに、何かに期待して消し去ってもらおうとしている限り、幸せはやってこない。誰かと共有は出来ても、最後には自分で抱えて生きるしかないんだ。自分なりのやり方で、時に傷つきながら、折り合いをつけながら、ベストな方法を見つけ出すしかないんだ。

エンディングソング(byジョン・ブライオン)が最後の最後に優しく寄り添ってくれるのが救いで、やはり何度も観てしまう。このラストのために観てるようなものだな…と、ついに気付いてしまいました。
https://youtu.be/FXL8sbalC8I
空きっ腹に酒

空きっ腹に酒