うーた

アルジャーノンに花束を/まごころを君にのうーたのレビュー・感想・評価

4.3


1968年版を観たんだけど、どうも映画のシメ方と主題が合ってない気がした。
小説版のラストの「どうかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束を供えてやってください」が無いと成立しないでしょこの映画は。
ナレーションでも、誤字入りの書き置きの画の挿入でもいいから、最後のショットにオーバーラップさせる形で入れるべきだった。
この映画のシメ方じゃただのアリス想いのキザ男の話になっちゃう。慈しみを説くべき映画でしょこれは。
最終ショットと冒頭のショットが同じシュチュエーションていうのはよかったと思うから、なんなら映画の冒頭に入れるのも悪くない。映画なら時系列を多少入れ替えても服装とかでいつのシーンか伝わるし、観終わった後にもっと印象的なシーンになったのでは。

小説版は文体のギミックも含めての演出が要の作品であるようにも思うし、そこ含めて映像化にはもうちょっと工夫が必要だったかもしれない。
チャーリーの発達に合わせてフィルムの色味が鮮やかになっていき、アリスとのハネムーンのシーンなんかものすごく詩的な撮り方やモチーフ選びができてたのはいいんだけど、最初の段階のチャーリーはもっとカメラの画角を狭くして手ブレを加えたりぎこちなさを入れても良かったかも。

映画の入りって難しくて、いきなり大きめに切った人を入れてしまうと物語に入りづらいから、大抵風景や小物のような非人間的なものを撮ったり、引きの人物から入ったりする。けどこの映画は子供に混じって遊び、檻のように見える柵に手をかけるチャーリーに寄ったショットから入るのが面白くて、彼が人間ではなく動物的な側面を持ってるのがよく描かれてる。
うーた

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