Omizu

父よ母よ!のOmizuのレビュー・感想・評価

父よ母よ!(1980年製作の映画)
3.8
【1980年キネマ旬報日本映画ベストテン 第6位】
斎藤茂男「ルポルタージュ父よ母よ!」を原作に、若者の非行に迫った木下惠介の意欲作。再現ドキュメント形式で、語り手である記者は最後まで姿を見せない。漫画やアニメーションなどを使った実験的な作品でもある。

木下惠介にとって最後にキネ旬ベストテン入りした作品となった。TSUTAYAにもないのになぜかYoutubeでレンタルできたのが謎。

漫画やアニメーションを取り込んだ実験的な手法は上手くいっていると思う。乱用するわけではなく、ここぞというタイミングで挿入されるのが流石なあたり。

非行に走る少年少女たちを羅列しているだけ、とも言えるが、それぞれをしっかりと切り取って見せている。終盤の「大人がやらないことは子供もやらない」という趣旨の発言には激しく同意した。非行に走るにはそれだけの理由がある。

132分とやや長い作品ながら、退屈させることなく画力で物語を引っ張っていく手腕は大したもの。カラーの強みを大いに活かした撮影も素晴らしい。

木下惠介作品の中ではあまり注目されてはいないが、木下の衰えぬ実験精神と攻めたテーマ、強靱な演出力が絡み合ったなかなかの力作。やっぱり木下惠介はすごい。
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