はたなか

アダプション/ある母と娘の記録のはたなかのレビュー・感想・評価

4.0
メシュローサ・マールタ監督の鑑賞2作目。
ベルリン国際映画祭で女性監督として初めて金熊賞を受賞した重要な作品。

目を引くのは、クローズアップされた顔の数々。
その表情は、演じてる感じのない ”ナマ” の表情で、ドキュメンタリー映画出身の彼女らしい画作りだ。
その画作りは、スクリーンに映る物語に真実性を加えさせる。


年齢の離れたカタとアンナの関係は、母と娘と呼ぶには難く、友人でもなく、かといって他人ではない、言葉に表現できない関係だと感じる。カタもアンナも、外交的には思えず、一言では言えないような過去を持ち合わせている。これが2人の関係を作り上げた要因であったのかもしれない。

そして何より印象に残っているのは、カタが不倫相手であるヨーシュカに別れを告げ、その後、カタとアンナがレストランに行き、2人で談笑しながら食事をしているシーン。楽しげに話す2人に対してナンパを仕掛ける男性が出てくる。しかし、2人だけのその場に男性が付け入る隙はない。まさにこれは、「2人だけの世界」であり、カタとアンナの関係性を表現した非常に重要なシーンであると感じた。

アンナの結婚生活とカタの子育て生活の、これから待ち受けるであろう苦悩を描いたラストは、ネガティブなものではなく、むしろ前向きな一歩であると感じる。カタとアンナのこれからの人生に、背中を押すようであった。


監督の別作品である「ナインマンス」にも通ずるが、自分の考えや生き方を主張して行動していく、「私は私」という主体性。これは女性に限った話ではなく、男性にも通ずる、すべての人間が自らの主体性を大切にしていこうという監督のメッセージのように感じた。

復刻上映がなされている今のうちに他作品もぜひ鑑賞していきたい。
はたなか

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