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喜劇 大風呂敷のgintaruのレビュー・感想・評価

喜劇 大風呂敷(1967年製作の映画)
2.0
藤田まことがいきなりベトナム戦争の戦場に現われるところから始まる。藤田まことは幼年開拓団として9歳の時に満州に渡ったが、その後馬賊に拾われ、そこから世界を転々としてきたという設定。
最初の方、映像のブツ切れが多い。今では不適切になる言葉のカットが多いのだろうか。さらに藤田まことが丸亀に着いて丸亀ボートレースが映されるシーンは2回繰り返される編集ミスもある。このように最初から見る気が失せる要素が多かった。
ベトナム戦争のシーンなど、どう見てもベトナムに見えない、爆破シーン撮影用の空き地という感じだが、戦車が登場していたり、爆破シーンは派手だったりと、そういうところに一応お金はかかっているようだ(笑)。

藤田まことは故郷四国の丸亀に帰ることになる。丸亀ボートレース場や琴参バスで川井というバス停で降りるところが映される。
藤田まことは許婚の芦川いづみに会おうとするが、すでに結婚していた。相手は藤田まことの幼なじみ、丸亀一の造り酒屋のボンボンの三遊亭円楽。なぜか円楽は四国をアジアの君主国家にしようという野望を抱き秘かに独立運動をしていた。藤田まことはこれに対抗し、自分が金を貯めて四国を買い取ろうと思い、東京に出て一旗揚げようとするというお話。

話は支離滅裂、ハチャメチャで一貫性がなく、タイトルどおり大風呂敷を広げただけと言う感じ。四国独立なんてのも、言葉だけでそれらしい行動や、逆にそれに対する周囲の反応なんてものは全然出てこない。

当時のお笑いタレント、今でも名の知れた人がたくさん出演しているのは面白い。小松政夫が「シラナイ、シラナイ」のギャグを連発しているのが懐かしい。円楽や歌丸と言った落語家も出てくる。しかし、演技はヘタ。特に円楽はかなり露出しているが棒読みでヘタさが目立った。
ドリフターズが出てくるのもすごい。荒井注、高木ブー、加藤茶の三人が出ている。いかりや長介や仲本工事も後で出てくるのかと思ったら出てこなかった。
アメリカ兵の役でバルボンとあったが、調べたら元阪急の野球選手、コーチとして活躍したロベルト・バルボンだった。結構野球関係で有名だった人。サンコンさんとタイプが似ていた、と言うかサンコンさん登場以前にそういうキャラクターで人気だったのだなあ。
木の実ナナの若い頃と言うのも初めて見たが、後年とだいぶイメージが違う。

この映画、当時人気の東宝の植木等の無責任シリーズなどをまねてやろうとしたのかもしれないが、藤田まことだとやっぱりちょっと違うかなと言う感じだった。藤田まことって当時喜劇役者だっただろうけれど、顔は三枚目だけどやってることはそんなに面白くない。むしろ演技派になってしまう。だから後年、必殺シリーズや刑事役でいい味を出すのだろうけれど。
この映画、もともと芦川いづみ目的で見たが、全く無駄遣い。そんなにメインで登場してこないし、コメディ映画の中でほぼ彼女だけがシリアスな演技をしている役割なのも、なんかこの頃の日活の彼女に対するひどい仕打ちを感じてしまう。芦川いづみってコメディエンヌも十分にやれるのにわざと浮かしてる感じだった。

なお、解説で四国を独立国にと言うような設定を、なぜか淡路島としているものがあるが、これは明らかな誤り。
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