Hinna

さらば、わが愛 覇王別姫のHinnaのレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
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観てみたら,170分はやはり長い!しかし,京劇に行きた蝶衣の人生を,その始まりから最後の瞬間まで描くにはこの長さと濃さが必要だと思うと納得。
“京劇”、“同性愛”,“激動の歴史”…なとなどキーワードだけで観始めたらこれは,もう中身ずっしり。170分ずっしり。

まず初めの“修行”と折檻の日々。正直観てられなくて目をつぶりたくなった。それでも京劇の魅力に取り憑かれて京劇の道に入るんだけど,私のような一般人にはいくら魅力に取り憑かれてもあの折檻の日々には戻りたくないな。“一般的”には虐待にしか見えないので,今はコンプラ的に色々問題になってるところもあるけども,現代でも,色んな芸事、芸術で一流の人はこれくらいのことやってきてるんだろうか。
それで小豆と石頭は修行と折檻を生き延びて才能が見出されていくんだが,んー、確かに“同性愛”,でもあるけど,あれだけの辛い日々を一緒に乗り越えてきて,一緒にスターの道をのし上がってきたなら,恋愛的な意味だけでなく特別な感情が生まれるのは理解できる。逆に“同性愛”って言葉で片付けていいのかと思うくらい、もっと色んな感情があるのでは。(英題は“愛”前面に出てるけど。)そしてあの菊仙,すぐに小豆と石頭という“普通じゃない”中に挟まれて去っていくかと思ったけど,最後まで残った強さとしたたかさはただものじゃないなと思う。
そして石頭…あなた1番“普通”の人になったんでは。あの強くて強かな菊仙とひたすら石頭と京劇に(むしろそれだけしか)生きる小豆と比べて、だけど。自分の保身やら名誉やらで,小豆も菊仙も傷つけて失ってるよ。でもあの場にいたらそうさせられる、あの自己批判ってすごい仕組みだと改めて感じた。

レスリー・チャン,美しい。
演技だと分かっていても,彼の最期を知っているのでアヘン中毒になったり落ちぶれていく姿を見て心が痛む。

確かに長いうえにずっと密度の高い胸いっぱいの映画だけど,一回映画館で観てよかった。もう一回観れるかは,あの折檻と壊れていく3人の関係に耐えられる心の余裕がある時に…。
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