いつの頃からか「脱力系」という言葉が使われるようになりました。
心和むほんわかしたマンガだったり肩の力をめいっぱい抜いた映画だったり小説だったり。
三木聡監督は脱力系映画のチャンピオンです。
『ダメジン』『図鑑に載ってない虫』『インスタント沼』どれもニヤニヤしながら和めますが『亀は意外と速く泳ぐ』の力の抜け加減は半端ないです。
2004年の『スウィング・ガールズ』で脚光を浴びた上野樹里。
お茶の間で大ブレイクしたのは2006年のテレビドラマ『のだめカンタービレ』。
間に挟まれた2005年に公開された上野樹里主演のこの映画は意味もなく面白すぎます。
【Prologue】
平凡な主婦片倉スズメ(上野樹里)には海外に単身赴任している夫からはほぼ毎日電話がかかってきます。
「亀太郎に餌やってくれてる?」
「うん、やってる」
「よし、OK」
スズメが何がOKなのか聞こうと思ったらガチャっと電話は切れました。
料理、洗濯、掃除、買い物、そして亀太郎に餌をやる。退屈な日々をおくっているスズメ。
ちなみに亀太郎とは夫が飼っているペットの亀のことです。
そんなある朝生まれた時から親友の扇谷クジャク(蒼井優)から電話。クジャクとは同じ街に住んでいますが会うのは久しぶりです。
クジャクの電話のあと配管修理に来た水道工事屋さんの事務所にトイレから出てきたイカ飯を確認しに行った帰り道のことです。
いつもスズメの行く手をはばむ100段階段。
今日は30秒で登ればいいことがあるぞと心に決めてスズメは駆け登り始めました。
懸命に駆け登っていると階段の上を通りかかった大量にリンゴをつんだリヤカーが倒れて何十個ものリンゴが階段を雪崩落ちてきました。
危険を感じて階段の途中に身を伏せたスズメの体の上をリンゴが流れ落ちていきます。
身を伏せながらふと脇の手すりの根もとを見ると切手代のチラシが目に入りました。
「なんだこれ?」
〈スパイ募集 委細面談 045−682−76✕✕〉
ルーズで自分勝手なクジャク(蒼井優)にくらべどんな場所で誰と話していても自分の存在感のなさに失望しているスズメ。
このままでワタシの人生は終わってしまうのだろうか?
そんなある日。
スズメは〈スパイ募集 委細面談〉の豆粒チラシをとりだします。
スパイ募集ってどういうことなのか、いたずらなのか、それとも悪質な勧誘なのかと豆粒チラシの連絡先に電話すると3日後に来てくれとの返事でした。
何かあったらクジャクに助けてもらえばいいやという気持ちでスズメは先方を尋ねてみます。
木造のオンボロアパートで出迎えてくれたのは夫婦のスパイ。部屋に入るなり男性から「よく見つけたね〜そのチラシ。スパイ合格!」
「君のその存在感のなさはスパイに向いている。とりあえず今日からスパイってことでよろしくね」
当面の活動資金として500万円を手渡されたスズメ。
存在感のなさが功を奏してすんなりスパイとして採用されたスズメに今までとは一転してドラマチックな生活が始まります。
トリビアねた、オタクねたてんこ盛りで何度観ても新しい発見があり楽しめるコスパ良好作品です。
この作品のネタバレすれすれの【Trivia & Topics】などもnoteの【乱れ撃ちシネnote】に書いております。
よろしかったらそちらもご笑覧下さい。
《乱れ撃ちシネnote》Vol.8 22.10.03
亀は意外と速く泳ぐ
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