rio0523

ミザリーのrio0523のレビュー・感想・評価

ミザリー(1990年製作の映画)
4.3
名作人こわ人監禁映画、良い

冒頭からラストで印象的に使われるタバコ、マッチ、ドンペリがメインのカットから始まり、次のカットでは原稿にTHE ENDと書かれる。中盤、ペンギンの置物等に見られるように今後物語に関わってくるアイテムを観客に記憶させるため印象的に映す、ヒッチコックの法則が多用されている。そのように事前に記憶されたものが以降使われる、予定調和的映画進行をしていく。このような私たちが観させられているものが、後々の出来事を想定した演出を多用している点において、この映画の起こった出来事は映画内の事実ではあるが、私たちが観せられているものは事件のあと、主人公がまとめ上げたものとして捉えることは出来ないか。
冒頭主人公は商業的に成功した『ミザリー』と決別する。決別後、彼は作家として書きたいものを書いたところでアニー=『ミザリー』ファンに襲われる。商業的成功作品に『ミザリー』=悲惨なこと、と名付けられているように作家としての主人公にとって商業的成功作品は悲惨であった。この映画は商業的成功VS作家として書きたいもの、として捉えることができる。アニーは商業的成功をどこかで引きずり、作家として描きたいことをさらけ出すことに自信がないことで作家自身の中に湧いた自身を引き止める感情のメタファーである。商業と決別した作品を燃やしたり、アニーがどこか主人公の身近に描かれている、『ミザリー』をラスト近くまで集中して描いてしまう等はそれ故だろう。
これを踏まえて、ラスト、「あの経験のおかげだ」と語っているように主人公は、この出来事を客観的に捉えている。この映画は、映画内の事実として発生した出来事、経験したことを作家として内省し、メタファーとして己の中で腑に落ちるように解釈し表象を具現化したものを観させられているのではないか。

あの辺の年代のホラー映画ライクな演出もあり面白かった
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