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復讐 THE REVENGE 運命の訪問者のkakakaのレビュー・感想・評価

5.0
2019カナザワ映画祭in名古屋シネマスコーレ。

スコアが足りない。
黒沢清で一番好きな作品は回路だったけど、それに匹敵する。

黒沢清の描く世界は虚と実の狭間で、見たいものを直接描かず、見えないけれど確かに存在する手ざわりを描く名手。観るものに想像させる訳だから、それが噛み合うと、もう最高の心地になる。
今回三池崇史の牛頭を一緒に見れたのも大きい。
両監督は名実共に、現代映画史を代表する監督だけに、この比較は非常に有意義だった。
三池崇史が見たいものをそのまま、観客を信じて実際に描いて見せるのに対し、黒沢清は観客を信じて見たいものを、イメージにして見せてくる。
この対比関係は実に面白い。

さて本作が如何に見事か。
表のしのぎは、前科者を引き取って洗濯屋を経営する三姉兄弟。
が、裏の家業は前科者を殺し屋に仕立てあげ、殺しを請け負う殺人ブローカー。
中でもヤクザにさえマウント取ってしまう末弟の六平直政の狂気の殺人マシーン演技は絶品。
哀川翔扮する刑事は、子供の頃にこの殺人兄弟に家族を抹殺されている。
別件の捜査中にこの姉兄弟と邂逅することになり、激しい復讐劇が始まる。
とかく姉兄弟の描き方が見事でキャラが立つので、わずか83分の映画にも関わらず、ジョーと力石、みたいに戦う事が宿命付けられた者たちの壮絶な闘いに見える。が、その実目の前に映し出される闘いは、どこか気が抜けていて、滑稽にすら見えてしまう。
これが黒沢清の妙技だろう。
ラストの、「やっばり拳銃は捨てられなかった」というモノローグは、一人生き残ってしまった悲哀と、これからも生きていく決意だろうか。
エンドロールで流れるフォーク調の哀川翔の歌もパーフェクト。
一番好きなシーンは、六平直政が嫌疑不十分で釈放され、兄と抱き合うシーン。
ただ抱き合うだけなのに、なんでこんなにエモーショナルに見えるんだ!?

そう言えば姉兄弟の経営する洗濯工場兼事務所の間取りがクリーピー物件の間取りに似ているような、、、。
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