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ストレンジャー・ザン・パラダイスのsのレビュー・感想・評価

4.2
青春・すれ違い・退屈

ウィリー、エヴァ、エディの3人を描いた青春映画。

金はない、刺激はない、恋はない、互いを思う気持ちはすれ違ってばかり。そんな映画グダグダになるはずなのに、むしろそこが魅力になっていることがすごいです。

『パーマネント・バケーション』もですが、ここではないどこかを求めることは若者の特権です。彼ら三人も刺激を求めてるわけではないんだけど、何か息が詰まって現代を漂流しています。

『パーマネント・バケーション』と違うところは、彼らは孤独を抱えているというよりも、退屈しているということです。本来孤独と退屈ははっきりと分けられるものでもありませんが。
その退屈は違う場所に行っても癒されることはありません。フロリダに行って競馬をする、海を見ても無表情、そんな彼ら自身が退屈を作り出しています。「見たような景色だ」「どこかで見たような部屋」というセリフからもそれがわかります。彼らにはどこに行っても同じ部屋、同じ風景に見えているのです。
男二人にとってエヴァは、退屈を打ち砕く来訪者に見えたのでしょう。エヴァだけは何かしたい、変えたいという意志と行動があるからです。

話は特に何か大きなことが起こるわけでもなく、劇的な風景があるわけでもありません。むしろ似たような部屋にガックリする景色ばかりです。それなのに画面はユーモアと美しさに満ちていて、全く飽きさせません。独特の間も流石です。

映像技法のことは何もわかりませんが、ジャームッシュは本当にこだわっているのでしょうね。不思議なぐらいに映像が心地よく目と頭を通過し、心にまで入ってきます。
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