Sono

50/50 フィフティ・フィフティのSonoのレビュー・感想・評価

3.0

主人公の病気を通して、周りも少しずつ変化していく――


お涙ちょうだいな映画でないところが良いけど、
なんだか中途半端な気もする映画。
ある意味現実を美化せず、自然かもしれない。

「病気になったところで何かが劇的に変わる訳じゃない」
終始そう思わせる作品だった。
あと、主人公の周りは病気以外の問題をそれぞれ抱えていた。
主人公の母親は、ろくにまともな会話もできない夫と癌患者の息子を抱えて、心労が絶えない。親友は女とハメることばかり考えるダメ男。
恋人は自己中心的で芸術家気取り、彼氏が病気なことが重荷になって浮気。
担当の研修医は患者個人よりもマニュアル優先の頭でっかち。
どの登場人物もあまり好きになれなかったけど、
そのモヤモヤはそれぞれの中途半端さがリアルだからかも。


ばかな親友は夜な夜なセックスの話ばかりだけど、
内心はとても心配していて、隠れて癌患者の本を読んだり
ほっこりする場面もあった(どっかの浮気女とは大違い)。


印象的だったのは、手術前日に親友の車の中で発狂する場面。
あの場面がなかったら、評価はもう少し低かったと思う。
病気が発覚してから感情的になることがなかった主人公が
唯一感情を爆発させた瞬間で、本当は不安と恐怖、それに怒りに押しつぶされそうだったことが伝わってくるシーンだった。



誰が自分の命に向き合ってくれるかどうかは、簡単には分からない。
その道に精通した人間とは限らないし、最愛の恋人とも限らない。
死を前に今までの幸せが壊れることもあるし、見つかることもある。
くだらない冗談ばかりの友人に感謝したり、経験の浅い研修医に救われることもある。病気は悲しいことだけど、人生を整理するきっかけにもなるのかもしれない、と思った。
Sono

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