Ryan

欲望の翼のRyanのレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
3.8
地獄のオルフェウス


ストーリー
ヨデイは養母レベッカに育てられ、自己の複雑な内面を持て余す青年、自分を足のない鳥にたとえ、飛び続ける人生を夢みる。彼は後にフィリピンを訪ねるが......。


主演 レスリー・チャン
監督 ウォン・カーウァイ


ウォン・カーウァイ初期の代表作
詩的なモノローグと起承転結を持たない構成、そして細部に渡る色使いと画角。
大絶賛されたのも納得だ。

鑑賞後、ふと自分に問うた。
「この映画の様に大恋愛をした事はあるか?」と。大恋愛をした事はあっても、自分が傷つく恋愛を望んで求めていく姿に、どこか"憧れ"を覚えた。

当時の香港の名残と匂いを感じ、行ったことのない街並みに思いを馳せる。
彼らが「もし生きていたら?」今頃はどこで何をしているのか?と余韻が終わることを知らない。
スタイリッシュだからこそのかっこよさとこの映像に合う程度のセリフ作りに感動すら覚える。

序盤から見る廃墟感とそこがどこなのか、後に知る答え。忘れられない時間経過を恋愛に見立てて描きつつ、一筋縄ではいかない心の弱い部分をツラツラと描き切っている。
ウォンカーウァイ作品の中で最も好きかも知れない。

彩度を抑える事によりスタイリッシュさと冷たさ、どこか懐かしさまで思い出させられる雨の音。
素敵な映画だと確信した。
Ryan

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