ユヅキ

アルゴのユヅキのレビュー・感想・評価

アルゴ(2012年製作の映画)
4.5
イラン革命に伴う米国大使人質事件救出作戦を描いた作品。監督は主演を兼ねている。実話ベースなのに、とても実話とは思えないような突拍子もない内容でかえってスリリングさが増しているように思う。

西洋中心主義、蔑視的なものを包含したオリエンタリズムの匂いが少しして、それもふくめて印象深い映画だった。
ノンフィクション映画は何とも危険なもので、”ノンフィクション“など存在しえないということに観客はとにかく無防備だ。しかもこの映画はイラン革命というあまりにもデリケートなポスト=コロニアルの問題を題材にしている。
イラン人が彼らの言葉で彼らの正義を叫んでいる様子に字幕もつけず、単に“喚くイラン人の映像“として描いている点、そして、彼らの米国人に対する行為の根底にあるものを描いていない(それどころか、彼らが性質として“残忍“な人々であるかのような印象すら与えかねない)点が気になった。「ん?」と思った場面はあげればキリがない。批判的視点ゼロで「面白かった〜!」と言って終わっちゃいけない作品だと思う。

この映画の公開後、イランは対抗して同じ事件をイランの側から描いた映画の製作を発表した、という情報があったので、ぜひ観れる機会があればいいなあ

作品自体はすごく上手く場面が組み合わさっていて、バランスのよいユーモアも楽しめた。(アメリカ側の人については)ひとりひとりの人間性が練られていて、どの登場人物も魅力的だった。主人公がどことなく醸す哀愁も、映画全体に深みを加えていたと思う。CIAの上司がカッコよかった!
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