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エディ・コイルの友人たちのcatmanのレビュー・感想・評価

エディ・コイルの友人たち(1973年製作の映画)
4.0

①ピーター・イェーツの職人的手腕への信頼度★★★★★
②いい気分で酔って寝てしまう主人公エディへの共感度★★★★★
③デイヴ・グルーシンによるジャズファンクに感じられるラロ・シフリン濃度★★★

イェー!ピーター・イェーツ!
70年代フィルムノワール。銃器類はよく出てくるのに銃声が響くシーンは1度だけ、みたいな犯罪映画って好きなんですけどコレもソレ系。ただし凄く地味。
うらぶれた中年の小悪党を演じるミッチャムの枯れた味わいが実に良くって、映画映えするあの顔立ちはもちろん、声もいいし背格好もいい。序盤のダイナー(だっけ?)で交わされるダイアログなんかを聞いているとタランティーノが影響を受けたという話も深く頷けるほど、彼の芝居に思わず引き込まれる。良い演出だなあ!
またアクションも控えめなら色気要素もゼロで、唯一のラブシーン(と呼べるかどうか)は寝起きでヨレヨレのミッチャムと太めのカミさんが狭いキッチンで朝食の準備中に不格好な接吻をする場面。底辺で足掻く熟年夫婦の生活感がたっぷりで実に良い。さり気ないゴミ捨てのシーンも。
ミッチャムの他にも、主人公とは旧知の間柄であるバーの店主で実はタレコミ屋のピーターボイルを筆頭に、主要な登場人物に無情な人生の悲哀を感じさせる何とも言えなリアリティがあって、存在感がじわじわと染み入って来る。ボストンの街の風景も雰囲気があるし、銀行強盗のシーンの緊張感も良いし、撮影もクールだなと思ったら撮影監督は『狼たちの午後』の人でした。シフリン・テイストのジャズファンクに寄せたデイヴ・グルーシンの音楽も超クール。

ただ全般的にあまりにも地味なので、『ブリット』の様な丁度イイ塩梅の外連味があったらなぁって思うものの、それじゃあこの作品ならではのノーカタルシスの虚無的な持ち味が薄れるので、やっぱりこれで良いんだろうな。
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