シーバゲッジ

コクリコ坂からのシーバゲッジのレビュー・感想・評価

コクリコ坂から(2011年製作の映画)
4.2
生きたこともないこの時代のことを、まるで生きていたかのように懐かしく感じる不思議な作品。
ジブリっぽいファンタジーは一切なく、16歳の少女と17歳の少年の恋愛、友情と、彼らの周りの当時の学生たちの様子をフィクションとは思えないほど克明な描写で描いている。

時代は高度経済成長期、東京オリンピック間近の横浜。当時の学生や、家族の形、街の様子がしっかりと描写されていて引き込まれた。
作中流れる坂本九の"上を向いて歩こう"のように、当時の若者からは常に上を向いていて、自分たちで"何か"を変えてやるという高い志が感じられる。そんな彼らが、今僕たちの暮らしている日本を作ってきたと思うと他人事とは思えない。考えさせられる。うまく言えないけど今と違って、みんなが自分を持っているという印象。

とにかく、時代を感じる当時の生活感が丁寧で綺麗でとても良かった。

また、作中の音楽も久石譲さんとは違う良さがあった。場面に適したBGMが物語を盛り立て、展開を広げていく感じがまさに映画音楽!!って感じで大好き。手嶌葵さんのことをどんどん好きになっていく。
音楽映画としても価値があるくらい。サントラは永久保存版レベル。

これといった大きな展開はないし、淡々と進んでいく話だけど、細かい心理描写や当時の若者の描写が素敵で大好きな作品。

戦後20年弱、日本激動の時代の最中、その片隅で起こったささやかな物語を切り取った心温まる話。