フレッド・アステアやダグラス・フェアバンクス・Jrら、往年の名俳優たち4人が、若き日の過ちから、ある女の亡霊に苛まれるという古式ゆかしいゴースト・ストーリー。アステアとフェアバンクス・Jrにとっては最後の出演作となった。
M・R・ジェイムズのゴシック怪談よろしく、炉辺での怪談を愉しむ町の有力者である4人の老人。そのひとり、市長(フェアバンクス・Jr)の長男が不可解な転落で死亡し、市長もまた謎の死を遂げる。帰郷した市長の次男の口から、残された3人は謎の女の存在を知る。話を聞いた彼らの脳裏には、若かりし頃の苦い思い出が蘇る…という筋書き。
妙にカットを割って複数のエピソードを並行させるので、テーマが追いにくいところがあるが、基本的にはシンプルな筋である。フラッシュバックに長尺を費やすなどダルい箇所も散見される。一方で、亡霊の登場シーンはなかなか凝っており、ジャック・クレイトン「回転」(1961)風のかそけき姿かと思えば、ディック・スミスが担当した特殊効果でグロテスクな姿を見せたりと多彩である(※)。亡霊の登場方法で加点としたが、やはりクラシカルで上品な基調には忍耐が要る。
※当初の登場から次第に変貌するが、わが国の「九相図」を思わせて興味深い。黒沢清は本作を「ベスト50」(1993)にあげているが(第46位)、確かにクライマックスの描写は黒沢作品に登場する亡霊たちの所作を思わせる