小津の映像的こだわりを十二分に感じられる一方で、ストーリーは後の「東京暮色」(1957)に並ぶウツ展開である。
戦後、夫・佐野周二の復員を待つ田中絹代。貧しいなかを何とかヤリクリするが、幼い息子の医>>続きを読む
うーん…これはプロットを切り刻んでこねくり回したせいで非常に分かりづらい作品になってしまった。「ワーニング その映画を観るな」(2019)で注目したソ・イェジがサスペンス映画の主演と言うことで期待した>>続きを読む
本作以降、小津の作品群に繰り返しあらわれる「父と娘」のドラマを映し出した嚆矢。ただ、本作には独特の湿度があり、後の作品群に比べても特異な位置づけにあると言える。笠智衆と原節子(小津作品初登場)の奇妙に>>続きを読む
小津映画が映し出す東京は、2023年の今でも「ああ、あそこだ」と思わせる原風景感がある。カーテン・ショットでインサートした風景が、その場所と続くシーンの性格を物語っているのである。小津の東京は、「宗方>>続きを読む
タイトルは「むねかたきょうだい」。小津が大佛次郎の連載小説を新東宝で撮影した変わり種。正直、小津はこういう男女のウェットなストーリーは不得意と言うか、向いていないと感じる。いかにも頼まれ仕事という風采>>続きを読む
タイトルバックに白地の「ドンゴロス」があらわれて、すわ小津かとのけぞったが、アラフォーで失業した映画プロデューサーの主人公、カン・マルグムが小津の大ファンという設定だった(ちょっと杉村春子と印象が重な>>続きを読む
舞台は鎌倉である。小津作品のなかで原節子が最も明るくふるまっているし、三世代家族や原の友人たちなどみな賑やかなのが気持ちいい。菅井一郎と東山千栄子の老親の会話は「東京物語」(1953)に、また、原が自>>続きを読む
お嬢様育ちで派手好きの木暮実千代と田舎育ちで実直な佐分利信の中年夫婦。夫婦の倦怠期で妻は夫の食事のとり方すらいちいち気に入らない。夫妻は姪の津島恵子のお見合いや知人の鶴田浩二の就職の世話などにかまける>>続きを読む
ウディとミア・ファローの最初の共演作にして、田園風景を舞台にした唯一の作品。なにしろ自然嫌いのウディのこと、野外撮影が多い本作は極めて珍しい。
20世紀初頭と思われる設定で、発明家のウディと妻が暮ら>>続きを読む
ニューデジタルリマスター版。笠智衆と東山千栄子の老夫婦が子どもたちを訪ねて尾道から東京にやってくる。開業医の山村聡や美容院を経営する杉村春子ら実子たちは忙しさにかまけて邪険にするが、戦死した息子の嫁・>>続きを読む
池辺良と淡島千景の若夫婦は息子の死後、なかなか冷ややかな関係にある。よせばいいのに池辺は通勤仲間の岸惠子にアプローチされ、ついコロッと不倫してしまい、怒った淡島が家出してしまう。そこで池辺に転勤話が出>>続きを読む
スキーモーグルで将来を嘱望されながら、ケガで引退し、その後ポーカー賭博の運営で名を馳せたモリー・ブルームの自伝が下敷きになっている。ジェシカ・チャスティンというアンチ・ヒロインを演じたらアメリカでは当>>続きを読む
うーんこれはフック不足で眠たくなっちゃう。「ハッピー・デス・デイ」シリーズや「ザ・スイッチ」(2020)の監督だけにコスり気味のテーマでも面白くしてくれると思ったが…
これはミシェル・ファイファーの独壇場なファンタジー・コメディ。ウディ・アレン的なテーマをジム・ジャームッシュ風にオフビートにこなしたと言えば伝わるか。
遺産を使い果たすまで浪費したファイファーが窮地>>続きを読む
小津のモノクロ最終作にして一番のウツ作品。妻と別れ、次女・有馬稲子と暮らす笠智衆にもとに、嫁に出た長女・原節子が戻ってくる。夫とうまくいかない原だったが、思い詰めたかのような有馬の態度を心配する。一方>>続きを読む
小津のカラー6作品の最初を飾る作品。暖かみのあるアグファ・カラーに赤が生える。伊藤弘了が「小津の狂気」と呼んだグラスの液体が一直線に並んでいるなど、異常とも言える細部へのこだわりが伺える。小津のフレー>>続きを読む
土手沿いの新興住宅地(これも時代か)を舞台に、4軒の家庭と子供たちを中心としたホームコメディ。笠智衆と三宅邦子の2人の男の子がテレビ見たしと騒動を巻き起こす。小津作品のなかではコメディ色が強く、また子>>続きを読む
「浮草物語」(1934)のセルフリメイク作品。中村鴈治郎率いる旅芸人の一座が訪れた港町での人間模様を人情味たっぷりに映し出す。鴈治郎が出演すると小津作品が生きいきとするが、これも例外ではない。看板女優>>続きを読む
この分野で新機軸があるわけでもないし、ストーリーも歯切れがいいわけでもない。だのにこの高評価はなんでなん?
里見弴の原作のせいか、今回は「母と娘」の物語。夫に先立たれた原節子と司葉子の親娘が、娘の嫁ぎ先をめぐって佐分利信、中村伸郎、北竜二の中年3人組にあれこれ翻弄される。結婚に乗り気でない娘を翻意させるため>>続きを読む
腐っても中田秀夫だと思って最後まで耐えたが、これジュヴナイル向けだったっけ?しょうもない脚本、しょうもない演出、しょうもない演技…Jホラーの断末魔。
読みは「こはやがわけ」である。造り酒屋の大旦那・中村鴈治郎を中心に、酒屋を継ぐ長女の新珠三千代・小林桂樹夫妻、北海道に転勤した宝田明を慕う次女の司葉子、そして亡くなった長男の嫁・原節子ら鴈治郎を取り巻>>続きを読む
ニューデジタルリマスター版。小津を知らずしてこれまで映画の何を観てきたかと衝撃を受けた作品。戦後の三世代の家庭(東野英治郎、笠智衆、佐田啓二)を通じて、その暮らしぶりと家族、男女像のあり方の変化(笠智>>続きを読む
アメリカン・ビューティーとは、アネット・べニングが丹精込めるバラの品種であり、また、スペイシーとベネットら郊外に暮らす中流アメリカ人家庭の美徳の謂いである。サム・メンデスが後に撮るド派手なエンタメ作品>>続きを読む
若くして結婚した高齢夫婦って、お互いの若い頃なんてすぐ思い出せるもんなのかな。どう見えてるのか興味深くはある。
19歳の青年と80歳の老嬢との恋愛関係というスキャンダラスな設定に目が行きがちだが、1970年代アメリカのシラケ・ムードを先取りした見事なコメディ・ドラマである。
厭世的で死の淵をふざけ半分に覗きこ>>続きを読む
「CUBE」(1997)と「スノーピアサー」(2013)を足し込んだような不条理系シチュエーション・スリラー。
アラもあるけれど、資本主義の本質のような寓話的な設定はなかなか面白く、リメイクされそう>>続きを読む
(2023.3.10 再鑑賞)
ギャツビーとブキャナンは同じWASPでもそれぞれ中流以下層と上流層出身、そしてニュー・マネーとオールド・マネーを代表しており、さらにはギャツビーはユダヤ系(ウルフシャイ>>続きを読む
「スリーパー」(1973)に続き、ウディが一貫したシナリオで製作した歴史モノコメディ。ナポレオン戦争下のロシアを舞台に、度胸がなく神経質なウディが兵卒として駆り出され、たまたま戦功をあげて想いを寄せて>>続きを読む
大スベリやな。そもそも「虫」のヴィジュアルがパケと全然違うし。何かイギリス風のイナタイ感じに脚色されてるのも奇妙に映る。
カフカはあえて虫の姿を詳しく描写せずに寓話として取り扱い、挿絵に虫を描くこと>>続きを読む
(2023.3.5 再鑑賞)
劇場公開当時に観に行った記憶が。「誰が損を?」結局は「ショウ」なのである。
※1959年に発覚したテレビ・クイズ番組「21」での八百長を取り上げる。当時の視聴率は驚くべ>>続きを読む
ベルイマン初鑑賞にして衝撃の作品を選んでしまった。ん〜まあ入門編でニクヴィストのカラー作品から…と考えたのがまずかった。
終末期の苦痛に苛まれる次女(おそらく末期がん)の看護に訪れた長女と三女、そし>>続きを読む
マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ウディ・アレンの3巨匠がニューヨークを舞台に撮ったオムニバス・コメディ。イタリア巨匠が揃った「ボッカチオ‘70」(1962)を思わせる贅沢な仕様>>続きを読む
The Goldfinch (ゴシキヒワ)とは、爆発事故で死亡したレンブラントの高弟ファブリティウスによる小品で、現在はハーグのマウリッツハイス美術館が所有している。
それがなぜメトロポリタン美術館>>続きを読む
これはキング版「スター・ウォーズ」だね。フォース、もといシャイニングを備えた善悪の対決や霊体との師弟関係なんて完全にそれだし、ユアン・マクレガーはオビ・ワンにしか見えん。
キングはキューブリック版「>>続きを読む