菩薩

機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKYの菩薩のレビュー・感想・評価

4.1
シリーズの中でもとりわけ戦場で消費される命と断ち切れぬ憎しみの連鎖に重きを置いた異色作、一発で散り一瞬で消え去る若き魂の消耗品としての軽さとは対照的に内容的にはズシリと重い。戦場の狂気の中でしか生きることができない者、戦場の狂気に身を捧げそれに飲み込まれる者、狂気vs狂気の熱き戦いを菊地成孔の凶暴的なフリージャズが更に煽る。この作品にはヒーローはいないし勝ち負けも無い、天才も超人もいないが人を超えてしまった者はいる、ソーラーシステムやコロニーレーザーのような不特定多数の「皆殺し」感は無く、目の前の命が着々と削られていく。補充兵として戦地に送り込まれた少年兵達が、初の実戦に戸惑いを見せているうちに陣形を崩され壊滅に追い込まれる様はあまりにもリアルだし、ジオン・連邦軍双方が目の前に敵がおり手に銃があるからと言うだけで撃ち合い殺し合う様には虚しさ以外の感情は無い。一年戦争期の時代背景を考えればあれだけの重装備と性能を誇るMSが戦場に投入されているのには違和感を感じるが、とは言えフルアーマーガンダムvs伝統の赤塗りザクとの死闘には往年のファンは胸を熱くするだろう。大人向けとの言うよりは大人専用、そしてこれは立派な戦争映画である、何たって主人公は「狂気」そのものなのだから。


ついでに言えば地味MSの筆頭である、ボール、ジム、旧ザクがなかなかの活躍をするところも個人的にはツボ、どんな状況にあったとしても、俺はボールにだけは乗りたくない。
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