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キャタピラーのamamのレビュー・感想・評価

キャタピラー(2010年製作の映画)
3.5
四肢を失い顔にも酷い火傷を負った状態で戦地から戻った久蔵は、お国のために戦った証である「勲章」と自分のことを軍神と祀る「新聞」に見入って自分の名誉に浸っていた。

シゲ子がリヤカーで久蔵を外へ連れ出すと、その軍神様を懸命に介護するシゲ子も町の人の賞賛を浴びたので、それは誇らしい快感をもって、シゲ子の心臓をくすぐった。

失ったものの大きさを前に、この勲章を誇りと思って鼓舞しなければ、やっていけなかったのだ。
しかし久蔵もシゲ子もやがて「クンショウ」に飽きていく。生理的な欲求が満たされていない貧しい生活の中で、勲章なんて実際何の役にも立たない。

「食べて、寝て、食べて、寝て…」
食べること寝ること以外の欲望といえば旺盛な性欲だけの久蔵。
監督の狙いなのだろうけど、この繰り返しに絶望を感じ、だんだん腹が立ってくる。
寺島しのぶの演技は、愛憎入り混じるシゲ子の心情を体現していて本当にすごい迫力だった。ちょい役の篠原勝之、久しぶりにみたな。

「芋虫」は未読だけども、久蔵が戦地で女を強姦したのち殺したことを思い出し苦しむのは、本作のオリジナルなのかな。
目を逸らしたくなる映像の連続だったが、若松監督が戦争に対して込めた怒りがひしひしと伝わってきた。
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