半兵衛

私立探偵モーゼスの半兵衛のレビュー・感想・評価

私立探偵モーゼス(1978年製作の映画)
4.2
別れた妻に親権を奪われ子供の養育費の支払いに日々追われるしがない中年探偵が、依頼された調査の最中親しい人を殺害され、自分も身の危険に晒される…。話だけ聞くといかにも70年代らしいハードボイルドだけれど、ユーモアとシリアスの絶妙な塩梅、学生運動に携わっていた過去が事件と絡み合っていく巧妙な物語展開、そしてそんな元奥さん曰く「生活保護寸前」の生活を送っている情けない中年男と飄々とした喰えない探偵としての顔の二つのを巧みに表現する主役兼製作のリチャード・ドレイファスの存在感により極上のミステリーへ。

テンポの良い演出やスマートな語り口も魅力的ではあるが、それ以上に妻に用事があるからと子供の世話を押し付けられ子連れ狼ばりに子供をつれながら探偵の仕事をする主人公が他の作品にはない微笑ましいコミカルさがあって独特な面白さを生んでいる。

「ロッキー」を手掛けたビル・コンティによるソウルフルなスコアも最高で、日常のゆったりとした風景から激しいアクションへと変化していく物語をナチュラルに表現して作品の魅力を高めてくれる。

のんびりとした前半からは考えられないほど爆弾をめぐる後半の緊迫したサスペンスも見物、そこからの解決してリラックスした主人公と息子たちのやりとりも最高。

ちなみに本編で子供たちが『ゴジラ対メガロ』の鑑賞をせがむ場面があるが、まさかのチョイスに思わず吹き出しそうに。それとも本当に製作された時期アメリカで正式に公開されていたのか。
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