森の木

フロム・イーブル 〜バチカンを震撼させた悪魔の神父〜の森の木のレビュー・感想・評価

4.2
おぞましすぎて笑ってしまった。宗教世界の狂った世界観が感じられた気がする。「愛の強さゆえに」生後9ヶ月の乳児をレイプする神父。権力と名誉、特権階級であることに執着するバチカン。何が神の化身だよ。

6才くらいで被害に遭った男性が話す最後の場面は唯一汚さを感じなかったけど、基本救いも透明さもない。ひどい話。でもこういうドキュメンタリー撮れるのは凄い。

この映画を観て感じたことは少し複雑で、映画製作者が、中心人物である神父に完全に焦点を当て切るのではなく、バチカンの隠蔽体質や信仰の闇について触れて中途半端な印象に終わることを避けられなかった(私にはそう感じられた)のは、勿論それが問題の核心に関わる重要な議論だからなんだけど、それより本当は、人間の闇が深すぎて手に負えなかった、オチをつけられなかったからではないかと思った。
その神父見てると、彼は悪くない、って気がしてきてしまう。それが彼なんだから仕方がないんだ、生きるために食べて何が悪い?って、私のほうが思えてくるくらいに、彼の身体は自然に動いて止められないように見えた。
それで思ったのは、彼は私達で、彼が人間だ、ってこと。彼の行為は法に触れるし極端だが、私は自分にもそういう部分があると思った。具体的に、こういう特殊な性癖、とか、趣味、とかではなくて、狂っていておぞましい部分、という意味。
だから私は彼を悪と感じなかった。ただ悲しかった。自分がああなってしまったら怖いな、というのと、完全に乗っ取られたようになっている彼を見て悲しかった。振り切っている。あれは病気だ。病気の人を責められるだろうか。みんなその病原体持ってるんだよ。発症してないように見えるだけで。
だから彼を裁くことはもはや不可能で、変えることも不可能で、製作者もそれを感じ取ったから理性での理解が比較的容易な、バチカンや宗教の権力構造に論点を映すことでストーリーを閉じたのではと思えた。怖い話だったな。
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