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黒い十人の女のSadAhCowのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
4.5
2021 年 88 本目

誰にも優しくて誰にも優しくないモテ男。狂言自殺でうまいこと立ち回ったと思ったら、待っていたのは死ぬより重い刑だった、という話。渦中のTVプロデューサーを演じるのが船越英二で、息子の船越英一郎がこの話のリメイク版に出演しているとは何とも胸アツ。そして船越英一郎の妻は狂気の女・松居一代ってもう落語かよこれ。しかし若いときの岸恵子のとんでもない美人さときたら…。当時の女性で身長 161cm って相当でしょ。その他にも山本富士子、中村玉緒、ちょい役で伊丹十三(当時は伊丹一三)など、キャストもまた何とも豪華で、見ているだけで楽しい。

男と女は結局は相容れないものではあるかもしれないが、本作では、少なくとも女同士は男を「飼い殺す」という点で利害が一致している。しかし妻と愛人たちが一致団結しているかというとそうでもなくて、男が万一復活してきたときに不利になりたくない(=もう一度愛人に返り咲きたい)から自分もお金を出して「飼い殺し」に協力しているという地獄絵図。男を罰してハッピーになる安易なシスターフッドものというわけではなく、同性同士も結局は利己主義で相容れないのではないかという後味を残している。しかし誰よりもイッちゃってるのは、この映画を二人三脚で作り上げた市川崑・和田夏十夫妻であるな…。
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