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ハリウッドがひれ伏した銀行マンのkyonのレビュー・感想・評価

3.5
80年代のハリウッドにおける独立系の映画作品の制作ブーム、ヒットの波の功労者の1人、フランズ・アフマンに迫ったドキュメンタリー。

彼が関わり世に放たれた映画たちは『プラトーン』『ターミネーター』『ランボー』『スーパーマン』など映画史にも残る作品も多数存在する。
オランダの中堅の銀行員だったフランズがどのように当時の映画産業の新しいシステムを考え、ハリウッドを支えてきたのかを、フランズの娘が監督を勤めたことで、フランズ本人から直近の関係者たちの証言を集めて構成している。

80年代のハリウッドの空気感がなんとなく掴めなくて、うーん…と考えていたところにこのドキュメンタリーはわかりやすくて助かった◎


印象的だったのは、当時フランズたちが編み出した”プリセール”という仕組み。

映画を製作する、と決意してまず始めるのが脚本。良い脚本を書くなり権利をもらうなりして、配給会社に監督や俳優陣、作品のイメージや方向性などを伝え、配給の契約を取り付ける。
配給の契約後に製作陣はフランズのもとへ向かう、フランズに融資を取り付け、実際製作、予算内、期限内に製作が終われば、配給会社に渡し契約金をもらい、その契約金を銀行に返済して一連のプロセスは終了。
ただ製作がちゃんと為されるかはリスクが伴うため銀行側は完成保証会社と組む。もし作品が完成されなくても銀行は損をしない構成。

でかつフランズは義理人情を大切にするタイプで、実際に会って、1度信頼関係を結ぶと、ずっと面倒を見るタイプだと聞いて嬉しくなる。関係者の証言も彼が好かれていたんだなとわかっていて、映画のビジネス面を聞きながら、フランズの功績を知っていく。

ドキュメンタリー中盤からはそんな好調なハリウッドとフランズの繋がりが徐々に変化し、さらにはフランズが銀行員をやめてしまうまでの顛末が語られる。

やや感傷的な流れになりつつ、
フランズの余命が少ないことから、娘がこのドキュメンタリーを撮るまでの経緯、そしてフランズの最後までが描かれて終わる。


身内が監督をしている分、視点はもちろん父親のこれまでの功績や誤解を伝えたい、という思いがあるから、そういった意味ではこの時間の一面を捉える形でならあり。映画業界ゆえの人間関係の波の話とかはリアルで、なるほどなと納得。
フランズが映画に対して、製作陣に対して愛が溢れてるのも素敵。

こういう一見関係なさそうに見える部分から映画史の重要な功績を見てみると、映画ってその時代の鏡だよなぁと感じる。
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