すたんぐ

ジョン・カーペンターの 要塞警察のすたんぐのレビュー・感想・評価

4.2
1976年に低予算で作られながらも今観ても色あせない籠城映画の金字塔。籠城映画といえば1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』もそのひとつで、ゾンビが襲ってくる作品だったが、この作品では無数のストリート・ギャングが襲ってくる。相手の正確な人数がわからないのがこの映画の怖いところのひとつで、いくら殺しても次から次へと死を恐れずに向かってくるギャングの姿はゾンビを彷彿とさせる。ふたつ目にストリート・ギャングがなぜここまで主人公たちを殺すことに執着するのか詳しく描かれていないところがまた怖い。ギャングのひとりが少女を撃ち殺す有名な場面から、彼らは人を殺すことを何とも思っていないどころか、退屈しのぎに人を殺すのだ。その人間性のなさ、彼らは本当に人間なのだろうかと思わせるカーペンター特有の"説明のなさ"がまた怖い。三つ目にギャングがサイレンサー付の銃で攻撃してくるところ。相手が一斉射撃を行ったとしても、その銃声が近隣住民に届くことはない。静かに包囲し、静かに殺そうとする彼らのやり方がまた不気味だ。登場人物も個性豊かで、逃げ込んできた男だけじゃなく、囚人をも守ろうとする正義感の強いビショップ警部補や殺人を犯している凶悪犯にしては理にかなっているナポレオン(スネークの原形となったキャラクター)が特にかっこいい。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のヒロインはゾンビにおびえる一方だったが、本作のヒロイン、リーは銃を手にギャングに立ち向かい、常に冷静な姿が印象的。"生き残る"というひとつの目的に従って警官と囚人が協力して戦う熱い展開もこの作品の見どころ。ブルーレイに収録されていた吹き替え版で鑑賞しました。(ナポレオンとスネークの吹き替えの人が同じ)
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