けーはち

ミスター・アーサーのけーはちのレビュー・感想・評価

ミスター・アーサー(2011年製作の映画)
2.9
超金持ちのボンボンが親に政略結婚させられそうになるけど庶民の女と恋に落ちてすべてを投げ出す決意をする、という死ぬほど古典的なシチュエーションのロマンティック・コメディ。1981年作品(アカデミー助演男優賞と歌曲賞を受賞)のリメイクで、リメイクは見事(?)ラジー賞最低主演男優賞、最低リメイク賞に輝いている。

★実写おぼっちゃまくん

主演はラッセル・ブランド(ケイティ・ペリーの元旦那というセレブだけど、ここ最近は見ないな。怪盗グルーのネファリオ博士の声優でもあったけど3作目でリストラされちゃったし)。いかにも名家のとっちゃん坊やキャラに、濃い顔だけど甲高い声を載せてきて確かにコミカルにこなしている。

実写「おぼっちゃまくん」って感じのノリで(今の若い人にはきっと分かるまい)、冒頭からバットマンのコスプレでバットモービルもどきのスーパーカーを乗り回したり、NYのグランド・セントラル駅を45分間借り切って恋人とディナーするなど、正気の沙汰ではないスケールの大富豪遊びは面白い。

けど、皮肉な子どもじみたジョークを言ったり、酒に目がない上に誰も止めないからアルコール依存になる程度には平凡な人間で、残念ながら、超のつく大金持ちで見ている世界が違いすぎて嫌味さえも感じさせないレベルまでには振り切れてないし、話はベタベタ、おまけに物語中でさしたる成長もしていない。作劇にもキャラにも魅力がないとなると、ノリきれない。

ただ、坊っちゃんのおつきのばあやを演じている、ヘレン・ミレンの好演には救われる。良家に仕える英国人の老女で真面目で厳格なのだけど病の床につくとテディベアをこよなく愛する少女な部分が首をもたげるのがちょっぴり切ない。それと坊っちゃんに見初められるヒロインのグレタ・ガーウィグもカワイイ(自分でも脚本を手がけることのある、なかなかの才媛)。

81年版のリメイク元も観てみたいな。リメイク元のテーマ曲は名曲なので聴いたことはあるんだけど……。