フィルモワ

合唱ができるまでのフィルモワのレビュー・感想・評価

合唱ができるまで(2004年製作の映画)
3.5
♪キーリーエ・エレーイソーン…のフレーズが、頭から離れません。

演奏は好き。でも練習はちょっと…という怠慢な自分には、情熱的な指導者クレール先生のレッスンに食らいついていくのは、なかなかに忍耐を強いられることでありまして、三夜観続けてようやくエンドロールに漕ぎ着けました。

本作はそのタイトルが示す通り、発表の舞台と言う完成形でなく、その制作過程を作品化した、ちょっと珍しいドキュメンタリーです。人が集まり、声が重なり合っていく所から、音楽は始まっているんですね。

人生を経てきて、それぞれに味やクセの出たご年配から、真っ直ぐな眼差しのティーンエイジャー、ふにゃふにゃと頼りなくも可愛らしい子どもたち。背景は様々な「部分」としての彼らが、歌を通して「一体」となっていく過程が、なるほどメタモルフォシス!まるで芋虫と蝶々を結ぶサナギのように、見えないところでの劇的な変質を感じさせます。

それにしても和音って、ただただ純粋に快いものですね。言葉に尽くせぬこの至上の喜びのためには、レッスンの反復や分断も、さほど苦にはならないのでしょう。