こもえ

Start Lineのこもえのレビュー・感想・評価

Start Line(2016年製作の映画)
4.0
今村彩子というろう者の監督を知ったのは、同じろう者であるサーフショップ&ハワイアン雑貨店の店長・太田さんとの出会いと交流をつづったドキュメンタリー映画「珈琲とエンピツ」の製作現場を追ったEテレの番組でした。

聞こえる人とろう者は心から通じ合えないという思いから自分というものを出さずに生きてきた孤独と葛藤を映像にしてきた彼女が、日本縦断自転車の旅に出た! 伴走者はカメラマン兼務の哲さん(←聞こえる人)。

沖縄から北海道・宗谷岬までの3842キロメートル、57日間の道中、今村さんは失敗の連続でその度に哲さんに叱られまくる。哲さん曰く「叱らないと、二人ともの命がなくなる!」

耳が聞こえる人とのコミュニケーションをテーマにしながらも、コンビニやお店で出会う人達となかなか話せない今村さん。そこでもまた哲さんに叱られる…。

そんな彼女の姿が、自分と重なってくる私。私も人見知りで初対面の人とはどう話していいかわからなくなるのです。聞こえないことだけがコミュニケーションの壁になるわけじゃないのよって今村さんに伝えたくなりました。

そしたら案の定、この映画を観た聞こえる人達からそんな感想が今村さんのもとにたくさん届いているのだそう。やっぱりコミュニケーションに多かれ少なかれ悩みを持つ人はけっこういはるんやね。

旅の最終地・北の大地では、実は仕込んでたんじゃないかと思うような出会いがあり、コミュニケーションとは何かを考えさせられ、コミュニケーションの奥深さをあらためて感じることができました。

最後の夜、自ら会話に加わって笑顔を見せた今村さんの姿がとても素敵でした。
そしてこれから今村監督がどんな映画を発表されるのか楽しみです。

しかし、哲さん。よくそんなに的確に冷静に「叱る」ことができるなぁと思っていたら(一回だけ感情的に「怒った」場面あり)空手の師範をされているとのこと。宗教学にも精通しているらしい。
いや、それでもどんな時も相手に「おまえ」じゃなく「あなた」と呼びかける哲さんは素晴らしい! 指導者として確固としたものが伝わってきました。

(これ、昨年末に観たのにレビュー書き忘れてた)
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