りりせ

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップのりりせのレビュー・感想・評価

2.8
めちゃくちゃコメディだった。

映画としてはそんなに価値ないかも。テンポいいし笑える。(というのが本編の内容とリンクしている…)

原宿のバンクシー展行くべきかどうか迷い、参考にと思ってこれを見たんだけど、ああいう客寄せパンダ的な展示を皮肉っててわろた。

従来の絵画文化が金持ちのコレクター精神に支えられていたのに対して、グラフィティはアンチ資本主義行為だから、途中からの展開に、ずっと気味悪さが付きまとう。

他者によって複製されたり、商業化され、縮められたり、グッズにされたり、作風を真似されたりしても、ある程度副産的な価値が残ってしまう(アーティストとしては価値がないのに)ことが、ここまで可視化されることってない。

それはグラフィティが物質的な作品じゃなくて、ほぼパフォーマンス的な作品だからだ。梶井基次郎の「檸檬」とか、メンヘラのリスカ行為と似ていると思う。これらは弱者としての衝動的な自衛本能や、刹那的な生命の輝きに支えられている。グラフィティアーティストは日陰者であり、隠れて行う行為であり、それを密かに見つけてほくそ笑む日陰者の同士を探しているのだ。

だから、マジでMBWはなんなんだって感じだと思うけど、彼がディズニーランドみたいにしたいって言ってたように、ディズニーランドとしては成功してるのよね。
あと彼の作った映像作品の狂気にもめちゃくちゃ笑った。まるでAIが作ったようだった。(全てのシーンがクライマックスであろうとする、しかしそこに意図はない、映像としての及第点を毎秒取り続けようとする感じが)
もちろん彼の平面作品も同じで、ルーツも思想もない、全てが虚構で固められていて(←本来のストリートアートは社会と地続きなものに)、その空間に永遠に閉じ込められたら狂うけど、一時的に楽しむ分には十分と言うか。

でもマドンナのアルバムのアートワーク有名だし、記憶に残ってたし、単体のクオリティとしては良いのよね。

うん、、広告デザインとしては良いのよね、、現代アートが意味を求めすぎなんですよね…?きっとね…?

でも、広告制作費とかギャラじゃなくて、あれを何百万とかで買ってく人がいるわけじゃないですか。その醜悪なアート事情、マジでどうする…?と頭抱えて幕となった。

複製も技術のシェアも撮影も簡単になったからこそ、やるかやらないか(他者の見えるところで発表するかしないか)だけで判断されるの本当に醜悪。

ふぁっくNFTアート。ふぁっく美術館女子。

あの会場で感動してた人ってなんなのだろう、あああ地獄絵図。でも人の感想ってそんなもんだし、誰でも発信できる時代だから、何者でもない状態から批評家だってなれちゃうし。事前情報とか関係性で簡単に人ってコロッと意見を変えちゃうものよな。

最近のこの風潮に本当に嫌気がさしたので、本当に分かる人にだけ分かれば良いって思う今日この頃よ。人々よ、衝動に忠実に生きろ、そして恥をかけよ。自身で行動することでしか立ち現れない第三者目線という者があり、いかに他人の評価軸に揺り動かされていたのかということに気付くのは黒歴史があってこそ、だったりする。

劇中でもシェパード・フェアリーがOBEYポスターを貼りまくってましたが、あれの元ネタの『ゼイリブ』を思い出しつつ、みんなOBEYさせられてんなよと言うことで…。
りりせ

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