しちみ

ピアノの森のしちみのレビュー・感想・評価

ピアノの森(2007年製作の映画)
4.2
"僕は…負けた。本当は分かってたんだ。どんなに頑張ったって僕は負けだって。森で最初に君のピアノを聴いた時から……分かってたんだ…。"

"もし僕が君に出逢ってなかったら僕はきっとピアノが嫌いになってた…"

"君はもっと自分のピアノを好きになった方がいい。そうすればきっと分かる。誰かと比べる必要なんてないことを"


いや〜、この作品大好きなんですよ。
もう何回も何回も見てて好きなセリフもこんなに覚えてます。(違ったらすみません)
原作も好きで引っ越す前は既刊全巻持ってました。引っ越してからは1冊も集めてなかったので最後がどうなったか気になる…。また集めてみようかしら。

まず、なんで好きかってところですね。
早いんだよな〜!早すぎる!こんなに早くに自分の限界を痛感する事ってありますかね?(笑)
まだ小学生なのに雨宮は自分のピアノの限界を知ってしまうんです。
そして知った上で彼はどうするのか、どんなピアノを弾いて見せるのか。
必死に海くんのピアノに追いつこうとします。彼は大切な友達でもあるけど時としてライバルでもある。

そして発表会。雨宮のピアノはかなりの完成度で誰が見ても素晴らしい演奏だった。
が、しかし。その後にピアノを弾いた海くんの演奏はスタンディングオベーション。
楽譜は無視するし靴は脱ぎ捨てるし、本当ならバッシングされてもおかしくないんだけど、何がすごいって小学生にして彼は自分のピアノを弾いたからである。
『一ノ瀬 海はやりたくてピアノを弾いた』
これが多分一番大きい理由です。
海くんがピアノを弾いている数分間は見ている私たちも魅力してくれると思います。
瞬く間に脚光を浴びた海くん。

そして場面は変わり一番後ろで見ていた雨宮のシーンへ。
これがうまく出来とる。一番後ろまでお客さんがいなくてライトも当たってなくて才能の差を見せつけられてしまった雨宮の絶望具合が胸に刺さる。
分かってたんだ…と口にして涙を流し座り込むシーンが一番印象深い。
小学生でそんな壁を痛感してしまったのね(T . T)
『雨宮修平はピアノをやらなければならかった』
この部分の差が大きいかなぁ、と個人的には思う。
雨宮が打ちひしがれるところはよく描けてると思うけど実際はお互いに才能を持ち合わせている2人。

阿字野先生が言ってることがやっぱり一番深いかなと思う。
海くんのピアノを追いかけても、海くんみたいなピアノが弾けたとしてもきっと雨宮は海くんには勝てない。
雨宮は雨宮のピアノで、自分のピアノで勝負して勝つしかない。
すごく現代人に欠けてる物だと思う。
自分自身のアイデンティティ的なものを必要としてる。これを小学生同士のやり取りで表現してるのがすごいのよ!!

もう映像が綺麗すぎて。音楽が綺麗すぎて。声優やってるのが上戸彩と神木隆之介なのは驚いたけど特に違和感もなく楽しめた。
阿字野先生が私の担任に似ているのが若干心残りではあるけど…(笑)
原作好きな人でも十分楽しめる作品だと思います。この映画はすごく大切なことを教えてくれると思う。才能や限界を感じてもなお好きだからこそやり続ける。これが一番の天才ではないのかなぁ。

本当だとこれから大人になって〜っていいところなんだけど映画では雨宮と一ノ瀬の別れで話が終わる。
別れ方もすごく好き。終わり方もすごく好き。全体を通してすごく好きで大好き映画です。
時間がある人には見てもらいたい!
ピアノの知識ゼロの私でも楽しめるので(^-^)
しちみ

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