とうじ

天使の顔のとうじのレビュー・感想・評価

天使の顔(1953年製作の映画)
5.0
フィルムノワールを見た後、すぐに「人生ベスト級」って言い過ぎな気もしなくもないが、本気でそう思っているのだから仕方がない。
これは同じプレミンジャーの「ローラ殺人事件」よりも、「堕ちた天使」よりも好き。「ローラ」は激ヤバのよく出来た場面がゴロゴロ入っているという感じだったが(あの終盤のシーンはまじでうますぎて叫んだ)、本作は隅から隅まで均等に完璧で、完璧すぎて人間的な温かみが感じられないまである、ものすごい映画である。
本作は「キャラクターと人物関係がしっかり出来ている」、「出てくる人物がみんな賢い」、「演出が上手い」という傑作ノワール三拍子を完璧におさえるだけでは満足せず、その上からさらにこれでもかというくらいの邪悪さをドロドロとぶっかけてくる。結果、本作は、暴力そのものがフレームから滲み出るような奇跡的な境地に至っており、90分尺という謙虚さもあいまって、本当に本当に、すごいことになっている。
あの自動車事故のシーンは、シンプルでありながら、正直クローネンバーグの「クラッシュ」が描写しきれなかった、衝突による車体の敗北と刹那的興奮、一瞬にしてバイオレンスの上昇曲線が最高地点まで達する清々しさと後味の悪さを的確に表現し得ている。
最後スパって終わる映画はたくさんあるが、本作では、「どすっ」ていう感じでTHE ENDの文字が浮かび上がる。
普通に溝落ちを殴られる感覚。
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