ひでぞう

天使の入江のひでぞうのレビュー・感想・評価

天使の入江(1963年製作の映画)
4.8
賭けること、その魅力を「贅沢と貧困の両方を味わえること」と喝破した、ジャッキーの潔さ。ファム・ファタールとしてのジャッキー、ジャンヌ・モローのなんと魅力的なことか。ジャック・ドゥミ監督が「この映画で最も描きたかったのは情熱のメカニズムだ」というように、1960年代の人びとのヒリヒリするような心の動き、情熱の在処がとてもよくわかる。この人間の実感、生きていると感じることのできる瞬間の素晴らしさ、それを求めてカジノで賭け続ける。ラストシーン、決してハッピーエンドではなく、身を滅ぼすような暗い予感があっても、それは限りなく美しい。最初から最後まで、人間の情熱の刹那を切りとることのできた、素晴らしい映画だ。
 そして、ここから60年後、私たちは、「コズモポリス」(デヴィッド・クローネンバーグ監督作品)の「エリック」(ロバート・パティンソン)よろしく、「カジノ資本主義」のなかで、人間の情熱も実感も失っている。
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