スギノイチ

兵隊極道のスギノイチのレビュー・感想・評価

兵隊極道(1968年製作の映画)
3.0
『極道シリーズ』の3作目だが、いつもの釜ヶ崎ではなく第二次大戦中の中国へと舞台が移っている。
仁侠映画でもありながら戦争映画でもある異色の番外編だ。

「勝新の『兵隊やくざ』を若山富三郎にしただけじゃん」と誰もが思うだろうが、単なるパチモン作品と思う勿れ。
まず、戦時下モノとしてとても面白い。
バラエティ豊かな兵隊仲間、良い上官、悪い上官、エロ、無常、暴力…欲しい要素は全て揃っている。
ただし、戦時下アクションであると同時に『極道シリーズ』の一篇でもあるわけなので、決して戦時下モノに寄り過ぎず、「島村親分が戦場にいたら」という効果を利かせている。
『兵隊やくざ』の大宮も元ヤクザという設定は同じだが、本編中でヤクザ時代の姿が描かれる事は全く無いため、元ヤクザとしての面白さよりは勝新のスター性に依存していた。ここは面白い違いだ。
しかも、本作には『兵隊やくざ』の有田上等兵のようなブレーキ役はいない。
それどころか、よりにもよって山城新吾が相棒なのでむしろやりたい放題になっている。
『兵隊やくざ』にあった重厚さやリアリズムは見事に消え失せ、下品かつ馬鹿馬鹿しくなっているものの良い意味で東映風味が効いている。

ライバル役を名和宏が演じているが、これはかなり良い役じゃないだろうか。
外道な親分に疑問を抱きながらも義理人情に殉じ、たった一人の妹(宮園順子)を大切に守っている、という任侠映画によくいる「仁義ある敵の侠客」なのだが、そんな男でさえ戦場の狂気にあてられて中国娘(大信田礼子)を強姦してしまうというのは中々シビアな描き方だと思う。
さらに、慰安婦にされ梅毒で狂った宮園順子を自らの手で殺害するシーンは痛々しくも名演だ。
その後は『極道シリーズ』フォーマットに則って島村部隊の悪党襲撃ショーになるのだが、怒りの名和宏が同行するのがまた熱い。
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