にじのすけ

イノセンスのにじのすけのレビュー・感想・評価

イノセンス(2004年製作の映画)
4.1
「人はなぜ人の似姿をつくるのか」。この問いにキムは「…人間の認識能力の不完全さはその現実の不完全さをもたらし、そして、その種の完全さは意識をもたないか、普遍の意識を備えるか、つまり人形あるいは神においてしか実現しない。」と応えます。フランスの哲学者メルロ=ポンティは「身体は意識であり客体である」と述べ、意識を重んじ物質としての肉体を軽視する伝統的学説に異議を唱えます。彼の「身体論」を突き詰めると”他者との共存”に行き着きます(詳しくは「知覚の現象学」参照)。このことは、この作品の本質にかかわる重要な論点だと考えます。
本作の主人公・バトーが求めても求められないもの、それは少佐の意識であり客観存在としての”身体”です。だから、ネット上で純粋意識としての存在となった少佐への思慕は永遠に満たされることはない。全篇を貫く寂寥感は、そんなバトーの永遠に癒されることのない哀しみからくるのかもしれません。
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