おおき

恋のロンドン狂騒曲のおおきのレビュー・感想・評価

恋のロンドン狂騒曲(2010年製作の映画)
4.0
人の人生の奥深さを感じることのできる映画でした。ウディ・アレン作品は現実離れしたアホなストーリーだけど、なぜか所々共感でき、映画一本を見終わった時には、新しい視点で物事を捉えられるようになります。今作はコメディ要素が多めでしたが、彼がこの作品の中で伝えたい結婚とは何か、社会とは何か、生死とは何か、などの深い議題を私たちに投げかけてくれます。今回は、僕の好きなアンソニー・ホプキンス、ナオミワッツ出ており、彼らのキャラクターが非常に愛くるしいな、と個人的にも思いました。
 ストーリーは3人の夫婦の話で、彼らはお互いに別々の問題を抱えていた。まず1組目の夫婦は、裕福な老夫婦の話で、彼らは自分達の老後の生活がどのようになるのかを全く想像出来ずに日々を過ごしていた。しかしある日、夫が臨床体験をし、死への恐怖を感じ始め、さまざまな若づくりを始める。妻は夫に嫌気がさし、離婚する。その後妻は、これからの人生の不安から知り合いの占いにどっぷりハマってもいたのだ。2組目のカップルはその老夫婦の娘夫婦の話である。彼女の夫は医者になるよう親から催促されていたが、作家になる夢を諦めきれず、両親と勘当してまで執筆活動を行うようになり、処女作を発表した。それは有名作品となり、一度日の目を浴びたのだが、それ以降は下降傾向となっていた。そんなキャリアの絶頂期に彼らは結婚し、彼女も彼の作家としての才能を始めは信じてはいたのだが、最近ではそれ以上に自分達の生活をこれからどのようにするかを重点視して、彼のことはもう頭になかったのだ。彼女の仕事は芸術家の秘書で、最後のもう1組の夫婦がその芸術家の夫婦についてであった。彼らの場合、経済的には何不自由のない生活を送っていたのだが、仕事に集中するあまり家族のことを蔑ろにして、妻はそれに耐えることができず、別居状態であった。彼らは人生の分岐点となる所でどのような選択をし、どのような人生をこれから送っていくのか。彼らの作り出す面白くも、どこか寂しくも感じられる内容は必見です。
 今作には、主人公というキャラが存在しませんが、それでも非常に楽しめる作品です。その理由は3カップルそれぞれにフォーカスされるシーンが何度もあるためでしょう。また、キャストにはアンソニー・ホプキンスやナオミ・ワッツなどの実力派俳優が出演しているのも見ていて飽きない理由のひとつなのでは、と個人的に思います。(特にこの2人は僕の俳優、女優の中でも1位、2位を争うくらい好きな人たちなので、彼らがフォーカスされるシーンがあるだけでもテンションが上がってはいました。)この映画には、さまざまな社会問題が含まれています。離婚、老後問題などさまざまありますが、僕達も将来これらの問題に直面する可能性は十分にあります。特に、老後については人間全員が考える議題で、非常に見ていてタメになるでしょう。彼ら老夫婦の言っていること、行動は馬鹿馬鹿しく見えるかも知れませんが、僕たちも彼らと近い年齢になったら、同じ死への不安、老いへの恐怖で頭がいっぱいになるでしょう。その時がきて、冷静な判断ができるでしょうか?それが実際にくる前に、今から準備をすれば、それらの心配も少しは軽減し、冷静な判断ができるのではないでしょうか。備えあれば、憂なし、という言葉がありますが、それをあまり考えていなかった人々の末路はどうなるのか、を知ることができる作品でもあると、振り返って感じました。皆さんも人生とは何か、人間の生死とはなにか、を知りたいと思ったら、ぜひこの作品を見てみてください。
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