サルミアッキ食べ男

のぼうの城のサルミアッキ食べ男のレビュー・感想・評価

のぼうの城(2012年製作の映画)
5.0
なんだかこのサイトではこの作品の評価が不当に低い気がする。
日本史が苦手な人に響かなかったという感じ?

キャストが豪華な分、登場人物が沢山いるように見えるが、本筋に絡む主要人物は10人以内に抑えられているし、物語は「石田三成から城を守る」と非常にシンプル。

登場人物のセリフも現代口語に訳されているので、時代劇と聞いて思い浮かぶ"とっつきにくさ"は極限まで排除されているように思う。

なので、『のぼうの城』のページを見て、
「星数少ないから見なくていいや」
と思った方、ちょっと待って!
めちゃくちゃおもしろいから!!

まずは何より、野村萬斎演じる「のぼう様」のキャラが良い。

日頃から農民とも分け隔てなく接しており、立場的には一番偉いにも関わらず、むしろ彼らからちょっと舐められてるぐらいのポジション。
いわゆる「愛されキャラ」というものを、おそらく天然と意図的、半々ぐらいの割合でやっている。

後半、その愛されキャラを利用してある作戦に出るところなど、一見チャランポランに見えるが冷徹に物事を見通しているという、トップならではの二面性がわかるのも良い。

家臣達が彼の決死のわがままに付き合う理由もわかるし、農民が彼のために奮起する理由もわかる、誰が見ても魅力的なキャラクターに仕上がっている。

続いて演出面。
本作は、監督に犬童一心、特技監督に樋口真嗣という2名体制で撮影されている。

これぞ樋口真嗣監督の正しい使い方だ。
本筋は人物の交通整理をきちんとできる犬童監督に任せ、スペクタクルとなる水攻めのシーンなどを、特技監督として実績豊富な樋口監督に任せる。

この監督2名体制は、今後もどんどん採用すべきだと思う。
監督ごとに得意な部分、苦手な部分はあるはずなので、それを互いに補い合えば、相乗効果で何倍も面白い作品が生み出せるはずだ。
(現状、なかなか2名体制の作品にお目にかかれないのが残念である。やはりギャラの問題か)

あと個人的にポイントが高かったのが、農民の「汚さ」。
性格の話ではない。

彼らは毎日外で作業をしているから、当然服や手足は汚れているし、顔も浅黒く日に焼けている。
当たり前のことだが、役者の顔を小綺麗に見せたいあまり、この基本ができていない作品が多い。

その点、本作ではトップ女優だろうが天才子役だろうが関係なく日焼けメイクを施し、ボロボロの服を着ている。
この細部への妥協のなさからも、本作の気合の入り様がうかがえるというものだ。

ドラマ、アクション、特撮どれをとっても見応えのある作品に仕上がっているので、未見の方は必見。