Taiga

ザ・マスターのTaigaのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
4.1
油の少ない油絵のような映画。全てのショットがボテッと濃く迫力のある画が一生描かれ続けている。真剣に見ているとPTAの演出のセンスに引き込まれ勝手に難しく考えようとしてしまう。しかし彼の言いたいことはどの映画でも一緒で孤独がテーマで描かれている。今回の映画でも同じでフレディの愛に対する孤独をずっと映しているだけである。海を股にかける男フレディは誰よりも自由で誰よりも窮屈に生きている。
才能なんてない二人。あったとしても一人は酒を上手に作ること、もう一人はつまらないジョークで人を騙すこと。二人ともごく一部しか認めてくれない才能を持つ二人。そんな二人は互いに惹かれ合い互いを笑顔にする。笑いが人間の生きる源である。こんな猿でも知ってることを大発見とか秘密だとか言って自慢げに話す教祖。それに賛同し笑い崇める信者たち。グロい。濃い原色だけで描いた家族の似顔絵みたいな群衆たち。その中で一人、油なんて混ぜず自分一人の茶色の絵の具だけでボテりと笑みを浮かべるフレディ。
それでもフレディはマスターを離れ自分がマスターとして生きていくことを決める。最後の笑顔は少しの孤独からの解放なのだろう。最後は少し青く油も混ざり優しい茶色になっている気がした。彼は勝った。ウィン。

好きなシーンは男二人が庭でゲラゲラゴロゴロするシーン。
Taiga

Taiga