ひよこまめ

ふがいない僕は空を見たのひよこまめのレビュー・感想・評価

ふがいない僕は空を見た(2012年製作の映画)
4.5
小説がとてもよかったので、映画も観てみようかなと。
原作ものあるあるの「あらすじ化」を心配しながらの鑑賞だったけど、杞憂でした(*^^)v
140分という時間をかけて、小説のテーマを声高にではなく、でも丁寧にきちんと見せてくれています。
男と女とは、sexとは、その先にあるものは、産む、という役割を担わされた女性とは、生まれるということは・・・そういうことがちゃんと、しっかり描かれていて、この映画はR18+なんだけど、今ならR15ぐらいでもいいんじゃないかと。

高校生の卓巳はふとしたきっかけでコスプレ主婦のあんず(里美)と不倫関係に陥るんだけども、それは決して「不純」異性交遊なんかではなく、「好き」という感情には理屈なんかないんだということがとてもよくわかります。
考えてみれば、人の感情ってどれも理屈では割り切れないようなものばかりなんですよね。卓巳は、そういういろんな人たちの感情のいけにえのようになって大変な経験をすることになるのだけれど、母親が営む助産院で生まれた赤ちゃんの股間に男の子の印があるのを見て「お前、やっかいなものをつけて生まれてきたね」と苦笑するシーンを映画のラストに持ってきたことで、辛い経験を経て卓巳も成長したんだということがよくわかって、それまでの展開はハードでヘヴィだったんだけれども、そのラストシーンでふっと救われる感がありました。

ベッドシーンとか出産シーンとか、一見過激な描写満載のように見えて、実際映画公開のときにも里美(あんず)役の田端智子さんの演技ばかりが話題だった記憶があるけれど、この映画においては必要だったということがよくわかります。

その他にも、卓巳の同級生の良太のエピソードとか、卓巳の母親が営む助産院でのエピソードとか、小説にある大事な要素がひとつも省かれずに、その意味を損なわれずに丁寧に描かれています。

若い人に観てもらって、生きて行くこととか、人と関わることとか、そういうことを考えてもらえたらいいのに、と思える映画でした。
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