YAHMAN

風立ちぬのYAHMANのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.0
多くの作品に描かれている「空」の意味がここにあったのか、理解できたような気がした。
評価が分かれたように、これまでの作風とはかけ離れ、様々な思いをぶっ込んだ感は否めないが、そこに、宮崎駿の伝えなければと焦る気持ちも読み取れる。
空に憧れ、ただ美しい飛行機を造りたいという技術者の思いと、それが戦争兵器となり、多くの命を奪ってしまう葛藤が痛い。
宮崎駿は、空にどのような思いを描いたんだろうと、これまでの作品の空飛ぶシーンを回想しながら観ていた。
素晴らしい飛行機が完成し、帰還できないかもしれないのにパイロットが手を振って技術者に感謝を表すシーンに、私は涙が出た。
私にも経験があるが、困難な仕事を成し遂げ、上層部では大きく評価され満足していたが、現場では望まぬ結果となってしまっていたこと…
そんな葛藤を、映画の中ではイタリアの技術者が救う。なぜ、ファンタジーを採用したのかという意見もあるが、救える人は彼しかいなかったんだろうと想像する。
映画では、大切な節目でまた風が吹く。
宮崎作品は「風の谷のナウシカ」で虜になったが、宮崎駿もまた、私の中の心地よい風だった。
監督への感謝の気持ちも相まり、エンドロールは涙がとめどなく流れ、「空に憧れて」のフレーズだけが、余韻として残った。
YAHMAN

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