「美しくなければ生きていても意味がない」
そう言ったのは、『ハウルの動く城』のハウルだったか。
『ハウルの動く城』も、後半は介護の話だった。
ハネケは「醜くとも最後まで生きなさい。」と説くカトリック的な人生讃歌を切って捨てる。「家族愛」とか「夫婦愛」とかそんな上品なことばっか言って、お前ら人生舐めんなよ、と観客を突き放す。そんな監督だから題名がズバリ「愛」ときいて嫌な予感してたけど、やっぱりな…という感じ。
わたしは耐えられない… 老いさらばへてなほ生きることに耐えられない。
わたしは言えない、どんなに醜くくとも人生は素晴らしいと、どうしても言えない。
ハネケは、そんな人の弱さのなかに、愛おしさを見出す。
題名の「愛」って、人間同士の矮小で卑小で歪んだ「愛」じゃなくて、神様がちっぽけな存在である人間を慈しむときの眼差しのことじゃなかろうか。