MikiMickle

パラノーマン ブライス・ホローの謎のMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.0
300年前に魔女狩りが行われたブライスホロー。
そこに住むノーマンは、ゾンビ好きの男の子。
彼には、死者が見えて話せるという能力があり、そのせいで、家族には疎まれ、友達にはいじめられます。

ある日、同じ能力を持つ、疎遠になっていたおじさんから、
魔女が300年ぶりに目覚めると。今まで封印してきたが、後を継いでくれと…言われるのがだ、叔父さんは大事な方法を告げぬまま、亡くなってしまう…

残されたノーマンは、偶然居合わせた友や姉らと共に、町を救うために奮闘します。


製作は、『コララインと魔法のボタン』のライカ・エンターテイメント。
とにかく、これがストップモーションアニメという事にびっくりします‼
そのリアルさが素晴らしい‼
セットのリアルさ、人物の動きと表情の滑らかさ‼
まるでCGのようなんだけれど、そこに手作り感をしっかりと感じます。
画像でもCGだって思うでしょ?
この作品は、3Dプリンターで人形が作られており、その人形の顔の数はなんと31000個以上‼ 上下にわかれた顔を組み合わせて(置き換え式。ノーマンの顔の表情だけでも150万通り)、細かな表情の変化を作り上げております。
CGだと思えるようなシーン(特にラスト)でも全て、全てが手作り‼
飛び散る岩、ゾンビが撒き散らすよだれ、トイレットペーパーのゾンビ、蝶々、怒れる少女…
ほんとに素晴らしいの一言につきます‼ アニメへの愛をひしひしと感じます。
特典映像のメイキング、めっちゃくちゃ面白いです‼これだけでも、1本の映画になると思う‼
例えば、靴もひとつずつ皮を染めてきちんと履かせられるように作ってあったり、ひとつのノーマンの顔の頭に275本の髪の毛が植毛されていたり、数秒のトイレットペーパーの幽霊を作り上げるためだけでも相当な研究と試行錯誤と時間がかかっていたり……
様々な職業の人が集まって、全ての事に全く手を抜かずに作っているのがよくわかります。
本当にすごいとしか言えない‼
現在のストップモーションアニメの最高峰と言われているのがよくわかります‼


誰からも理解されなかったノーマン。
いじめられ、疎まれ、それによって心を痛め、でも、皆を救おう、ほんとは怖いけどがんばろうっていう純粋な気持ちがいとおしく感じます。
そして、その頑張りによって、人間関係もだんだんと変化していくのです…お姉ちゃんと、親友になっていく友人、いじめっ子、そして、親との関係性…うるうるとします。 
誰かから見たら全く見えないものに話しかけているノーマンなので、それは、確かに変わり者です。それを認められないのは無理もないでしょう。しかし、「個」は「個」なのです。
「個」を認めあえる事の大事さ。自らの手で、それを切り開き、様々な経験を積む中で、気がついたら自分の「個」にも自信をもてるようになっていく、成長物語です。

一方、ゾンビが現れて、逆にゾンビ化する大人たち。この描き方は素晴らしいです。パニックに陥った人間の本性と、流れに流される流動性、異質なものを排除しようとする恐怖心、伝染性…異様な狂気に包まれていきます…
ゾンビ映画の面白さって、私は人間のそういった部分にあると思っていて、 この映画は、アニメという事もあり、パロディのようにおかしく、とてもポップにユーモラスに描かれています。

また、魔女狩りという悪し過去。人を人と思えない恐ろしき時代背景もしかり。そんな事を、子供にわかりやすく教えているように感じました。
そして、ラストでの勢いあるハラハラする映像と、その後の穏やかさへの転換の安らぎ、美しく、ジンワリとします。
あと、ノーマンの部屋のゾンビグッズが可愛すぎるのっ♪目玉から出てる電導歯ブラシとか、くちに足入れるスリッパとかお墓目覚まし時計やゾンビライトや♪

とにかく、こんなすごい技術と努力とストップモーションアニメ愛に満ちた作品が! 特典映像ともども、もの作りへの愛を感じる映画でした。
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