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チェリーについてのyokoのレビュー・感想・評価

チェリーについて(2012年製作の映画)
5.0
大方の予想の「ぱっと見世間知らずな女の子が業界に食い物にされる映画だろう」を覆す。

しかし私はわかっていた、このイノセンスな主人公は、女衒のようなジェームスフランコに、業界に食い物にされないと。
それはたまたま同時期2013年に公開されたジェームスフランコのSpringbreakersを見ていたからだ。女衒に見えるフランコも実は女に支配される側なんじゃないかと。彼の空笑いがそれを予感させていた。そもそも二人の恋のスピードが遅い。フランコのビジュアルに騙されてるけどまるで童貞チックだよ。やりやり、アゲアゲというより、彼の強権的な母親を見るにライアン・ゴズリングのような去勢された男感。の空虚さね。

プロミシングヤングウーマンと同じシーンがあるのもフランコの、男の弱さを暗示しているのでは?

評価が低く、女性の裸で釣って浅い映画、ただ流されてるだけで浅い映画、という感想が多くSpringbreakers同様心外なのだがw両者とも2.7よw「まあ男子ってば浅い映画に裸で釣られて映画ってもんを知らないんだから〜」みたいなニュアンスなのよ。

Springbreakersは「パッパラな女の子が、悪い男たちに〜」と教訓めいた話かなと思わせてまさかのファンタジー路線に入り世界の全てをぶっちぎるのだが、そこまでのぶっ飛びはなく安心してほしい。でも今作が気に入ったなSpringbreakersも見てほしい。

主人公のイノセンスへの性的な目線のスタンスはいわゆる男の消費物というよりは、ニコラスウェンディングレフンのネオンデーモンのそれに近く、ヘザーグラハムはジェナマローンを彷彿とさせる。そしてエロ業界に食い物にされていくんだろうなと思わせて、そうならない展開。ぱっと見胡散臭そうなカメラマンやデザイナーは性欲ではなく、単に美に忠実な人。逆に素朴な理解者ぶってる一般人ぽい男性に着地しないところが似ているて良い。まあ映像センスはネオンデーモンやspringbreakersほどじゃないんだけどね。

都合よくエロシーンのため主人公が流されているだけという浅い感想があるのだが、フランコが劇中で日本の美術について語るシーンが今作のテーマとなる。「戦後日本の芸術家たちは、西洋から多大な影響を受けた。1970年からは伝統の手法が見直された。まるで失われた過去を探し当てるみたいに」(その美術史自体の解釈の是非はわからないが)人は影響を受け流され何かにたどり着く主人公の暗示な訳で、影響を受ける、流されることを肯定的に描いている。あとバタフライエフェクトの話もそのシーンで引用される。流されないとそもそも最初の最悪を抜け出せなかったからね。

虹色の旗がはためく屋上で、朝方しかしまだまだ薄暗い中二人はキスをする。暗闇でも夕焼けでも朝日でもないその暗さが絶妙なシーン。

むしろ本当に安い映画だとエロ業界に傷ついた主人公をインド人が、僕だけはそばにいるよとか言って最後は地に足エンドになる。そちらの方が逆に消費物、願望充足映画に見えるがどうだろうか?

映画の中で攻めがTOP受けがBOTTOMと表現されていて(日本みたいにsとかmとか言わないのがオサレだよね)主人公は未経験なので受けBOTTOMからスタートするわけだ。でそのうち攻めTOP側の役をやる。そして最後は撮影監督の立場に収まるわけで、役の位置だけでなく文字通りBOTTOMからTOPへ成り上がる話なのよ。

低評価エロ映画と誤解してる人たちはおそらくフランコのかっこよさからヤリヤリのアゲアゲと見誤っていて、インド人と同じくゲイ、童貞要素を持っている人間だと気づいてない可能性が高い。彼が強権的な母から逃れる(流れる)機会を失ったためあのようになってしまったとのと逃げだ(流れて)してきた彼女の対比を考えると評価も変わるのでは?
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