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スプリング・ブレイカーズのKYのレビュー・感想・評価

スプリング・ブレイカーズ(2012年製作の映画)
4.0
ハーモニー・コリン監督作。

一見『中身のない水着女子大生4人組のちょっぴり危険な薄っぺらい春休みの悪ふざけ』をEDM的なド派手な光線色とSkrillexの音楽で見せるだけのチャラいだけの映画に見えがちだけど、実は性的な意味での女性と男性の関係性が従来から変化した事を象徴的に深く描いてて面白かった。

構成は前半は『JDがハメを外した結果、悲劇に見舞われる』という凡庸な展開を見る側に期待させるミスリードで展開し、そこからズラしていく。

セレーナ・ゴメスがそのミスリードの中核の役割をしていて早々退場するのも上手かった。もっとも、ジャスティン・ビーバーやZEDDとの交際でこのメンツの中では日本での知名度ダントツな彼女が早々退場するのは見るモチベーションを下げるマイナスもあるけど。

昨今ハロウィンとかEDMフェスでセクシーな格好をする日本の女子達がいるが、彼女達のパーティー感の根底にあるものは男性を意識してというよりも女友達との友情の証明と退屈な日常への反動の振り切りだ。

もちろんそういう女性の価値観は昔から存在してて、そこにセックスの匂いがするから男が群がり食い物にするというのは定番だった。前半はその手の物語として展開していく。

しかしこの映画が凄いのはその先の現在の女子が新たに獲得した価値観を描いている点だ。彼女達はセックスの匂いを求める男性を敵として、男性が女子を支配する価値観に銃を向ける。クライマックスが女と3Pしていた男に銃を向けるところなんかまさにその象徴だった。

さらに女3男1の組み合わせにストーリーが変化してからは、そんな女子の現状に男性はどう向き合うことにならざるをえないか描いていた。その答えは『男性が女性化する』というものだ。その役割を担ってたのがジェームズ・フランコ。

日本でも閉鎖的になる女性に開いてもらおうと必死にハロウィンでコスプレしたり男性性を排除したSNS、Instagramでオシャレ写真を撮る女子化した男性は増えている。そしてそんな女子化した男性も純粋強固な女子の友情とは隔たりが存在することも示唆している。

この映画が2012年に制作されたというのは結構凄いというか、日本の女子は今年ようやくこういう感じに追いついた感ある。ただ、このパッケージから期待してたハッピー感はほぼ無く、パーティーシーンも空虚。

むしろ今の女子の本質を浮き上がらせる映画なので、この映画に出てくる様な女子はまず真面目すぎて間違いなく嫌うタイプの映画とも言えるし、普通の人が見てもまったく感情移入の余地がない映画だ。評判があまり良くないのもうなずける。自分もクラブに行く前に見たのでモチベーションを下げられた。
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