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グランド・マスターのSnLのレビュー・感想・評価

グランド・マスター(2013年製作の映画)
3.1
脚本が散らかっていると思う。
戦闘シーンは、ワイヤーを駆使したカンフーの爽快なアクションが始まると思いきや、スローモーションがいたるところに挟み込まれ、アクションというより演舞を見せられている感じ。
アクションでないなら、ではストーリー重視なのかというとそういうわけでもない。イップマンの人となりがどうとか、カミソリがどこから来たどんな人物なのか、あるいは彼らの人生と抗日戦争がどう関わっていたのかについて、深い掘り下げがなされているわけではない。(ルオメイにはまだわかりやすいストーリーが用意されているが、カミソリに至っては、この映画では不必要な人間だったとさえ言えるのでは。)

ルオメイを含め、異なる流派を体得した3人の個別のストーリーを無理やりくっ付けたものを見せられているよう。
戦後、香港から故郷の仏山に帰られなくなったイップマンが妻と故郷を思うシーンで幕を閉じるのだけど、それまでの間にイップマンがとりわけ家族を思っているような描き方がされていたわけでもないために、唐突な印象を受けたし、こういうとこに脚本の散逸ぶりが表れているように思える。

ただ映像は◎。雨の中で敵とイップマンが組み合う真っ暗な絵作りののち、金ピカの華やかな妓楼へと移るオープニングの対比は鮮やかだし、イップマンとルオメイの別れの際、武術家達の辿った激動の人生と重ね合わされる香港の街は情緒を掻き立てるものだった。
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