KAMBAYASHIAI

ホーリー・モーターズのKAMBAYASHIAIのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
5.0
レオス・カラックスの人生が詰まったような、かなり内省的な表現で敷き詰められた映画です。とても感覚的なので、文脈を理解しようとして観ると、おそらく混乱に陥ると思いますが、とにかくカラックスの『表現』なんだと一度頭を空っぽにして挑むと、カラックス自身が1番惚れ惚れしてるだろうと思えるようなカットの美しさに、毎度毎度驚かされると思います。
映画冒頭、まずカラックス本人が出て来て驚きました。彼の内面に入り込んで行くかのような、不思議な始まり方です。


主演はもちろんドニ・ラヴァン。51歳の時の作品ですが、相変わらずの物凄い身体能力に驚きます、、、。
ドニ・ラヴァン演じるオスカーというお金持ちのおじさんが、リムジンの中で何度も変装を繰り返し、その度に街に出ては本気の演技をします。それは何かの仕事をこなしているようなのですが、誰に依頼をされているどんな仕事かなど、細かい設定は不明です。
このリムジンの中にいるドニ・ラヴァンの映し方が、素晴らしい!!皺の隅々動きのひとつひとつが生々しく生き生きとして、まさに惚れ合った監督と俳優の、共作。ため息ものです。

カラックスは、女性に夢中に夢を見てしまう極端なロマンチスト。『ポンヌフの恋人』のその後のようなシーンでは、当時の恋人ジュリエット・ビノシュへの想いが溢れていて、その純情っぷりに少し苦笑いしてしまいます。
ラストには、この映画が公開する1年前に若くして亡くなった妻カテリーナ・ゴルベワの、美しすぎて凍ってしまったような素晴らしい1枚の写真が出てきます。胸に刺さる、ラストカット。

カラックスの映画はいつも、彼が今どんな状態なのか、それを知るための映画なのかもしれません。
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