ばんばん

アンチヴァイラルのばんばんのネタバレレビュー・内容・結末

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

あ!クローネンバーグ一族だったね?!なるほどね!って後からわかりました。

病に侵された最中の幻覚もグロっぽいのですが、美しいです。
かえって、何気ない注射やちょっとした細胞の摂取シーン、皮膚の変化が痛そうでした。

美しいセレブと同じ病を味わいたい、という庶民が彼らのウィルスを金で買ってわざと疾患する世界のお話。セレブは、このウィルスを売るのも彼らの仕事。同様に、細胞の一部を提供して、培養し人工的な筋組織に植え付けたものも売られています。
はい!カニバです!儀式的カニバでございます。実際、主人公は肉売りに、カニバでしょうよ、と言います。肉売りは否定しますが。肉売りは、金のためにやっているだけさ、とも言います。

ウィルスを扱う企業は大きく二つあるらしいです。
そのうちの一社に主人公、シドは技師として営業マンとして勤めています。シドは若くどうみても何らかの病気にかかっています。
シドの営業をみていても、ああ、これはやばい人だ、とわかります。担当する客を選ぶときも、客の心の内を見透かすような言葉が、ゴリ押しをするわけではないのに客の心を掴んですんなりと事は進みます。彼自身が、セレブのウィルスを体内に住まわせる事の意味を本当に知っているからなのです。美しい言葉でした。
この会社の社長は言います。
「私たちは物語を商品としているのです」
売っているのは病ではない、敬愛する人の体内に侵入し、増殖し、その人を苦しめたモノです。同じモノを自分に植え付けることで、その人と自分は一体になる、その物語を売っている、だからうちのウィルスは、セレブ直送で遺伝子操作して他に移らないように処理している良品です、とも言います。

シドは、ハンナというセレブに執着しています。完璧な美、と表現します。そして、彼女のウィルスの専売しているこの会社で仕事をし、そしてこっそり彼女のウィルスを体内に入れて持ち出しています。肉売り経由で横流しををするのはオマケみたいなものです。

ある時、ハンナの担当者が違法にウィルスを持ち出し転売したとして逮捕されます。焦るシドですが、でもラッキーなこともありました。ハンナがまた新たな病にかかったので、それを採取に行けるのです。憧れの人を目の前にするのは勿論ですが、ウィルスも手に入るのです。

と、まあ後はいろいろあるのですが、煽り文句にあったような映画じゃないです。
人体すら経済活動をたすける為のものとしてしまった企業や国家と、それとは別に崇拝をこういった形で当たり前のようにしている庶民やシドのフェティシズムの認識の差もちぐはぐで興味深かったです。

みている間もラストも、ただただ、わたしは感謝の言葉でいっぱいでございました。
フェティシズムを個人の作品で吐き出すのは簡単ではないかと思うのです。でも、映画って多くの人々が関わるじゃないですか。そこが頭おかしいと思うんです。関わった人々が、共感しないまでも理解はしていないとこれだけカニバ愛の心に響くものは作ることができないと思うからです。
え!!??どんだけ多くの理解者(変態)が作り上げたの?ここですよ……。
感服いたしました。
ばんばん

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