誤解を恐れずに言うと人間は皆、グレーだ。明度100%の純白のようなパーフェクトに無垢な人間もいなければ、明度0%の混じり気の無い闇のような悪人もいない。持って生まれた資質に加え、親,友人,教育,環境などに感化されながら育ち、誰もが正義と悪の狭間のどこかにいて、ちょっとしたことで正義寄りになったり悪の成分が多めになったり、常に両極の間を揺れ動きながら生きる。
物語は大きく3つに分かれている。最初のパートの主人公ルークはストーカーもどきの行動に銀行強盗とやっていることは最低だし間違った手段ばかりではあるが、彼を突き動かしているのは幼い息子への愛情だ。2つめのパートの主人公エイヴリーは正義感溢れる警官。あることをきっかけに内部の不正の片棒を担がされ組織に蔓延する悪事に気付くが、それを暴露する過程を逆に利用して成り上がっていく。2人の人間の全く違った生き様の中にも、やはり善と悪の両方が交錯する。
そして最後のパートは彼らの息子たち。生き方を決めるのはもちろん自分自身だが、親の影響はやはり大きいし、生を受けたときに与えられた個々人の資質というのも少なからずあるのだろう。
この物語は善悪合わせ持つ2人の男と、次の世代への因果を描いたもの。物語の展開(内容)自体は必ずしも『親の因果が子に報い』にはなっていないのだけれど、息子達の人生に少なからず影響する。自分から選ぶことのできない生まれ,親,先天的なもの,そして今に影を落とす過去の出来事。それが宿命。宿命は変えられない。
が、最後、走り去っていく主人公の姿は、変えようのない宿命を受け止めつつも、自分自身の新たな道を歩もうとしているのかなと思わせるものだった。宿命(宿った命)は変えられないが、運命(運ぶ命=自分で動かす)は変えられる。ラストのシーンはそういうことなんだと考えたい。